後頭下筋シリーズ ~ 後頭下筋と眼球運動、眼精疲労~

「後頭下筋」という筋肉があります。

頭の骨(後頭骨)と首の骨(頚椎)とをつなぐ小さな筋肉ですが、姿勢保持や平衡感覚に関わる重要な筋肉です。

小さな筋肉のわりに重たい頭を支えるという大きな役割を与えられているので疲れやすく、コリが発生すると首こり、肩こりだけでなく、頭痛やめまいなどの自律神経失調症状、むち打ち様症状など多彩な症状を出すことが知られています。

その他にも、「疲れ目」や「眼精疲労」のような症状の原因となることが分かっており、パソコン作業やスマホなどが多い現代人のパフォーマンスを下げるものとして問題視されています。

 

 


【目を使うと緊張する後頭下筋】

「後頭下筋」は、「眼球運動と連動して緊張する」という性質を持つことが研究で分かっています。

「物を見る」という動作をする時に、頭がグラグラと安定していない状態ではしっかりと見ることが出来ません。

ですから、物を見る時には頭を安定させるために必ず「後頭下筋」が収縮して頭部を安定させようとします。

 

現代人は、スマホ、タブレット、パソコンと、目を酷使していますので、「疲れ目(眼精疲労)」と「後頭下筋の過緊張」がセットの症状として出てきやすいのです。

 

(参考文献) 平良 眞也, 目島 直人, 神山 寛之, 後頭下筋群が衝動性眼球運動に及ぼす影響について, 理学療法学Supplement, 2009, 2008 巻, Vol.36 Suppl. No.2

 

このような場合、「疲れ目(眼精疲労)」に対して目薬を使ったとしても「後頭下筋の過緊張」は変わりませんし、首に負担の少ない姿勢を取ったとしても、目を使う限りは「後頭下筋の過緊張」は必ず出てきてしまいます。

※ 補足

「VDT 症候群」というものがあります。

VDT(Visual Display Terminal)作業、すなわち、コンピュータなどのディスプレイやキーボードなどの情報機器を用いた長時間の作業によって健康障害が症状として表れている状態のことをいいます。

VDT 症候群の症状としては,①眼精疲労などの視機能に関する症状、②首や肩のこりなどの筋肉・骨格系に関する症状、③いらいらや不安感などの精神・心理的な症状が挙げられます。

この「VDT 症候群」と「後頭下筋群」との関連性が報告され、研究が進んでいます。

特に「ゲーム」による眼球運動と後頭下筋の過緊張から、子供たち(だけではなく大人もですが)の緊張性頭痛、片頭痛が問題になっています。

 


悪い姿勢と目を使うことのダブルで後頭下筋を痛めてしまいます

「後頭下筋」は、頭の後ろ~頚部に付着している筋群ですので、姿勢によって負担がかかり、緊張やコリが出やすいところです。

ですからパソコン作業やデスクワークが多い方は、上記のような症状に悩まされていることでしょう。

そして、「後頭下筋」は姿勢による負担だけではなく、「眼球を動かす時」にも緊張してしまうため「疲れ目」や「眼精疲労」などの症状を惹き起こしやすいのです。

※ 目のまわりやこめかみの痛みやだるさ、疲れ目などが主症状の「眼精疲労」についてはこちらの記事で詳しく解説しています。 → 眼精疲労ってどんなもの? どうしたら良くなる?

 


【後頭下筋をゆるめるストレッチ】

デスクワークやパソコン作業で硬くなった後頭下筋をゆるめるストレッチをご紹介します。

正確には「ストレッチ」ではなく、筋肉の力を抜くために行なう「漸進的筋弛緩法」を応用したリラクセーション法です。

 

① 頭の後ろで手を重ねて支えるようにします。

② その姿勢で頭を後ろへ押すようにします。その時に手は前に力を入れて頭が動かないように支えます。

(頭と手で「押し合いっこ」するようなイメージです。)

③ 5秒間程度、力を入れたあと、力を抜いてリラックス。

④ 次に、額に手を重ねて頭を支え、さっきの動きとは逆の方法に力を入れます。(頭は前に、手は後ろに)

⑤ 5秒間程度行ない、力を抜いてリラックスします。

⑥ 筋力にもよりますが、5~10セット行ないましょう。

 

ポイントは「力を入れること」よりも、力を入れたあとに「抜くこと」です。

イメージとしては、「スイッチをオフ」にして脱力させるようにすることです。

 

目をよく使った時にこれを行なうことで、硬くなった後頭下筋の「スイッチをオフ」にして休ませてあげましょう。

 

※ 「漸進的筋弛緩法」についての記事はこちらです。合わせてお読みください。

→ 「ストレスによる肩こり、首こりの解消法 ~自宅で出来るセルフケア 筋リラクセーション法~

 


【その他、後頭下筋の治療法の例】

後頭下筋の過緊張は、上記のように「不良姿勢によるもの」「眼球運動によるもの」以外に「頚椎のズレ」からも起こります。

下の図のように、後頭下筋は後頭骨と第1頚椎に付着してますので、第1頚椎のズレがあると必ず緊張してしまいます。

こういう方の場合、「姿勢による負荷」「眼球運動に伴う緊張」「頚椎のズレ」という3つが重なり、難治性のものに陥ってしまうのです。

対症療法として、マッサージをしたり、血行を良くしようと温めたり、ストレッチをしたりとご自身で何かされていますが、頚椎のズレが根本にある場合は、なかなか治りません…。

頚椎のズレがあるかどうかは以下の記事を参考にチェックしてみてください。

( → え??? アナタ、うつ伏せで寝てる人??? (完結編) )

 

頚椎のズレは、肩こり、頭痛、自律神経失調症などの不定愁訴だけでなく、将来的には「変形性頚椎症」に陥る可能性もあります。出来るだけ早めに対処しましょう。

 


当院では「後頭下筋」の問題に対し、「後頭下筋のコリ、癒着除去」、「頚椎偏位改善」、「後頭下筋に分布する血流再通」を目的とした治療を行っております。

(お困りの方は、初回の無料カウンセリングをご利用いただくと良いと思います。問診、各種スクリーニングを受けていただいた後、治療法、治療の組み立てをご相談させていただきます。尚、初回カウンセリング時の治療は行っておりませんのでご了承ください。)


【色々な症状の原因となる後頭下筋】

「後頭下筋」については、これまでに何度もご紹介しております。以下の記事をまだお読みでない方は、先にこれらをお読みいただくと良いと思います。

→ NHK「ガッテン!」で紹介  ~後頭下筋群~

→ トリガーポイント(筋筋膜性疼痛症候群)

→ ~頚椎の偏位 後頭下筋 頚性神経筋症候群~

→ 後頭下筋群への治療についての考察(トリガーポイント、頚性神経筋症候群、筋硬結など)

 

 


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