治療が必要な「ストレートネック」とはどんなものか?

※ この記事は、前回の記事(ストレートネック)の続きです。

まだお読みでない方は、先にこちらの記事をお読みください。

( → ストレートネックについて

 

 

 

「ストレートネック」とはどんなものでしょうか?

正常な頚椎は適度なカーブ(生理的前弯)を持ち、その角度は30~35度の範囲と言われています。

そのカーブが真っすぐな状態に近づき、角度が30度以下になったものを「ストレートネック」と言います。

 

 

生理的前弯は頭の重量を支えるクッションの働きもしています。

ストレートネックでは、そのクッションの働きが悪くなるため首への負担を受けきれず、

首回りの筋群の疲労、過緊張などがみられるようになります。

 

そのため「首こり」や「肩こり」、「寝違え」などを起こしやすくなりますが、

症状もなく、単に「見た目」だけの問題であれば特に治療の必要もありませんし、

原因となる「悪習慣」をあらためることで治ります。

(※ あらためるべき悪習慣はこちらに書いてあります → ストレートネックについて

 


治療が必要となるストレートネック

ストレートネックの原因となる「悪習慣」をあらためても変化がみられず、尚且つ以下のような状態であれば、

治療が必要となる場合が多いです。

 

頚部の筋群に「線維化」、「癒着」などの器質的異常が起こっていたり、

頚椎の関節(椎間関節)に変性(軟骨の劣化や摩耗、微細な骨棘変形)や

アライメント(配列異常)が存在している場合(変形性頚椎症、頚椎椎間板ヘルニア、斜角筋症候群、胸郭出口症候群など)では、筋の変性、骨の初期変形の状態ですので悪習慣をあらためるだけでは治るのが難しいでしょう。

 

以下にチェックポイントを紹介しておきますので参考になさってください。

 

1.首を動かすと「痛い」、もしくは「動かしにくい」

 

下図のように首を動かした時に「痛み」や「違和感」を感じるとか、ゴリゴリとした抵抗感を感じるとか、

左右の可動範囲に差がある場合には、単に「筋肉が硬い」ということだけでなく、

頚部の椎間関節に異常があるかもしれません。(変形性頚椎症の前段階である「椎間関節性頚椎症」のおそれ)

 

 

これは頚椎のアライメント(配列)が乱れた状態が続いたことにより、

頚椎椎間関節の適合性が失われ、関節軟骨の劣化や摩耗が進行した現われです。

「硬くなった筋肉が軟らかくするため」と称してストレッチなどをされている方がいらっしゃいますが、

無理にゴリゴリ動かしていると、さらに軟骨や関節周囲の靭帯を痛めますのでご注意ください。

 

 

 

頚椎が真っすぐに並んでいれば、左右の椎間関節はバランスよく動くので首の運動に問題は出ませんが、

配列が乱れていると関節部で引っかかりなどが起こり、痛みや動きに左右差が出てしまいます。

こういう状態を放置していると関節軟骨の劣化、摩耗は進行し、徐々に「骨変形」を起こすようになります。

 

2.腕のだるさ、しびれ感がある

頚部からは腕への神経や血管が出ています。

首回りの筋肉が硬くなり神経・血管を締め付けたり圧迫するようになると、

腕にだるさやしびれ感などの症状が出てくることがあります。

(斜角筋症候群、胸郭出口症候群などと呼ばれます)

これは「変形性頚椎症」や「頚椎椎間板ヘルニア」の前段階であることも多いので、当てはまる方は一度病院などで調べてもらった方が良いでしょう。

 

 

3.肩こり、首こりを併発し、変形性頚椎症や椎間板ヘルニアの前段階のもの

単に頚椎のカーブが少なくなっているだけでなく、

頚椎のアライメント(配列、並び方)の異常を併発している場合、

肩こりや首の痛みなどの一般的な症状には「変形性頚椎症」や「椎間板ヘルニア」などが隠れていることがあります。

そういう場合は「見た目の問題」を気にしている場合ではないと言えます。

 

きっちりと治していかないと、将来的に「頚椎椎間板ヘルニア」や「変形性頚椎症」に陥る可能性が高いです。

(↓ 詳しくはこちらの記事をお読みください)

後頭下筋群への治療についての考察(トリガーポイント、頚性神経筋症候群、筋硬結など)

 

4.自律神経症状やうつ傾向がみられるもの

めまいや耳鳴り、異常発汗、眼精疲労、頭痛など、自律神経失調が関与する症状や

不安感、イライラ、倦怠感など、適応障害、うつ傾向などを惹き起こすケースも多くみられます。

頚椎がストレート気味になると、脊柱側にある「自律神経節」に牽引ストレスが加わりやすくなります。

神経線維は牽引や圧迫などのストレスに弱いため、自律神経の機能が低下し様々な自律神経失調を起こすようになるのです。

そして「身体の不調」を感じるようになると不安感が大きくなり、精神的にもゆとりが無くなってしまうためメンタルにも影響を及ぼしやすくなります。

そういう場合にはまず身体にあらわれている症状を緩和させて「身体のゆとり」を作っていくことが必要です。

「身体のゆとり」は「心のゆとり」につながり、回復へのサイクルを作ることが出来ると考えています。


 

頚椎の配列異常がなく、頚部への負担を受けきれられるだけの筋力をもっている方であれば

「ストレートネック」は見た目だけの問題ですので、気にならなければ治療は不要と考えます。

しかし、頚椎配列異常があったり、椎間関節の変性や変形がある場合は徐々に病態が進行します。

当初は筋肉の症状(コリ感、だるさ、突っ張り感など)ですが、適切な治療をせず放置していると、

関節の変形、骨の変形へと進行しますので出来るだけ早く治療を開始してください。

 


 

最後になりますが、現在お困りの症状はどのようなものですか?

痛み? コリ感? 頭痛? だるさ? 見た目?

いずれにしても、今の症状が「ストレートネック」から来ているものなのか?

それとも「別の原因」から来るものなのか?

それを見極めないといけません。

 

例えば「首が痛い」という症状は、

「ストレートネックの人だけ」に見られる症状でしょうか?

逆に「ストレートネックじゃない人」は、首が痛くならないのでしょうか?

 

「あなたはストレートネックです」と言われたり、

「自分はストレートネックだ」と思っていると、

今の自分の症状とストレートネックに因果関係を持たせてしまって

「ストレートネックを治せば、今の苦痛から逃れられる!」と思い込むことになります。

しかし上記のように「ストレートネックは単なる見た目の問題で、今の症状の原因は別にある」というケースも多いのです。

 

まずは、現在の状態と症状とを見極めてみましょう。

 


 

(お困りの方は、初回の無料カウンセリングをご利用いただくと良いと思います。問診、各種スクリーニングを受けていただいた後、治療法、治療の組み立てをご相談させていただきます。尚、初回カウンセリング時の治療は行っておりませんのでご了承ください。)


ご相談、お問合せはお電話(06-6334-0086) または以下のお問合せフォームからお願いいたします。

https://funa-in.com/contact/

 

 


参考: 安藤哲朗. 頸椎症の診療. 臨床神経学, 2012, 52.7: 469-479.

参考: 佐野裕基, et al. 首下がり症状を呈した変形性頸椎症症例に対する脊柱アライメントの改善を指向した理学療法介入の効果検討. 理学療法学, 2022, 49.2: 145-154.