腰痛「出世魚」

腰痛の原因となるものは様々で、

筋・筋膜性腰痛(筋肉・筋膜に問題があるもの)

椎間関節性(腰椎と腰椎の間の椎間関節に問題があるもの)

椎間板性(腰椎と腰椎の間ではさまれた椎間板に問題があるもの)

椎間板ヘルニア(上記の椎間板がはみ出てきたもの)

仙腸関節性(骨盤にある仙腸関節に問題があるもの)

脊柱管狭窄症(背骨の中を通る脊髄が、変形した骨組織などに圧迫されるもの)

変形性腰椎症(腰椎に変形所見がみられるもの)

…などがあります。(これでもかなり大まかな分け方なのですが)

 

しかし実は、これらが単独であるわけでなく、徐々に進行しながら混在しているケースが多いのです。

これまでにもブログで書いてきましたが、運動器系(骨、関節、筋肉、など)の障害は、

…という風に進行することが多いのです。

(以下の記事を参考に)

【参考資料】運動器系障害の病期分類

【参考資料】運動器系障害の病期分類 その②


例えば、「ギックリ腰」を起こした方が整形外科などを受診し、レントゲンを撮ってもらって「骨には異常がみられない」という場合、「筋・筋膜性腰痛」という診断をされます。

この段階では「筋肉の障害」ですので、しばらく安静にしておけばほとんどのものは回復します。

しかし「ギックリ腰」を起こしてしまう要因(例えば慢性的な筋肉の疲労、腰椎のズレ、筋力不足、筋肉の柔軟性低下など様々)を抱えたまま日常生活を過ごしていると、また痛めてしまいます。

そして、また病院を受診し、レントゲンを撮ってもらっても「骨には異状なし」と言われ、「運動不足かもしれないから適度な運動を」と指導されても、特に運動をすることもなく日々を過ごし、また何年か後(何か月後?)に痛めてしまう…。

そういうことを何度も繰り返していると、ある時レントゲンで「腰椎と腰椎の間が狭くなってるね」とか言われ、MRIを撮ってみると「ヘルニアがありますね」「腰椎椎間板ヘルニア」の診断を受ける。

こうやって、めでたく「筋肉の障害」から「椎間板の障害」に昇格できたということです。

もしかするとこの方は、そのうちどんどん軟骨がすり減ってきて、関節もいびつになってきて、腰椎の変形も進み「変形性腰椎症」になり、そこから進んで「脊柱管狭窄症」にまでたどり着けるかもしれません。(出世魚みたいに)

つまり、「筋・筋膜性腰痛」、「椎間板ヘルニア」、「変形性腰椎症」、「脊柱管狭窄症」は、同じレールの上に乗った病態であり、放置しておけばどんどん進行していく、ということです。

(途中で寿命が尽きれば「変形性腰椎症」までで終わるかもしれませんが…。)

 

出来れば最後のゴール(?)にたどり着く前に「途中下車」が望ましいと思います。

 


【補足】

「筋・筋膜性腰痛」は、筋肉レベルの問題ですから「筋肉の症状」が主に出てきます。

ですから何らかの形で(ストレッチとかマッサージとか何でも良いですが)筋肉の状態を整えれば症状の改善はみられるでしょう。

ですが「椎間板ヘルニア」では、筋肉レベルの症状(痛みとかだるさとか)と、椎間板の障害による症状(痺れなど)が混在していることが多くなります。

もしも、筋肉レベルの症状の割合が「7」で、椎間板の障害による症状が「3」だったとしたら、上記のように「筋肉への治療」で「7」の症状は軽減するかもしれません。

しかし、筋肉レベルの割合が「2」で、椎間板の障害による症状が「8」だったとしたら、「筋肉への治療」だけでは症状がかなり残ってしまうことになります。

 

当院には「椎間板ヘルニアの手術をして、痺れは消えたけど痛みが残っている」という患者さんが来られます。

こういう患者さんの場合、「手術で『椎間板による症状(痺れ)』は除去できたけれど、筋肉レベルの痛みは残ってしまった」と考えられます。

ですから「筋肉レベルの症状」に対して治療をすれば改善の余地もあるわけです。

(※実際には筋肉レベルの問題だけでなく、腰椎の関節、骨盤の関節など、その他の要因も混在していることが多いですので、当院においてはそれらの状態をみながらトータルで治療を組み立てます。)

 

つまり、何が言いたいかというと、「何でもかんでも治ります」ということではなくて、

「適切に状態を見分け、適切な時期に、適切な処置」をしましょうということです。

 

筋肉レベルの症状が大半の「椎間板ヘルニア」であれば、筋力をつけることで解決するかもしれませんし、

逆に筋肉レベルの症状が少なく、椎間板の障害による症状(ヘルニアが大きくて神経の圧迫が強いなど)が強いものであれば手術が必要かもしれません。

そういう「見極め」をしておかないと単なる「その場しのぎ」になる可能性もあります。

 

ですから仮に「脊柱管狭窄症」と言われたとしても、「どこからの障害による症状が強いのか?」というのを見極めれば、諦める必要もないかも?ということです。

(脊柱管狭窄症のことは別記事で書く予定です)

 

 

(お困りの方は、初回の無料カウンセリングをご利用いただくと良いと思います。問診、各種スクリーニングを受けていただいた後、治療法、治療の組み立てをご相談させていただきます。尚、初回カウンセリング時の治療は行っておりませんのでご了承ください。)


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