自律神経を整える ~妊活中の現実~

2023.06.21

「自律神経」の働きが悪くなると授かりにくくなる…というのを聞いたことがあるかもしれません。

ネットなどで検索すると、「自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあり、交感神経はストレスを受けた時に働き、副交感神経はリラックスした状態で働く」みたいなことが書いてあると思います。

 

何となく理解できそうですが、妊活にどのように関わるのか?はちょっとややこしいかもしれません。

ですが、自律神経が整った状態は授かりやすい身体を作るための基盤となるものですから、

もう少し理解を深めてもらうと、「自律神経を整えて、妊娠しやすい身体を作るための生活」を実践していただけると思います。

 

自律神経とは?

まずは、神経の基礎知識からです。

 

「神経」には、五感や温度、痛みなどを脳に伝える「感覚神経」、脳からの命令を筋肉に伝えて身体を動かす「運動神経」、内臓や血管などの働きを調節する「自律神経」の3種類があります。

 

「自律神経」には、「交感神経」と「副交感神経」の2つがあり、一つの臓器に対して両方がつながっています。(これを二重支配と言います)そして、シーソーのように「片方の働きが上がれば、もう片方の働きは下がる」というバランスを取っています。(これを拮抗支配と言います)

 

そして、交感神経はストレスを感じた時、身体を「戦う(または逃げる)」のに都合良いように調節してくれます。例えば皮膚の毛細血管を細くします。これは敵と戦いケガした時に出血を少なくするためです。その他、心臓は筋肉が戦う(または逃げる)のに働きやすいようにたくさんの血液を送り出すようになりますし(心拍数を上げる、血圧が上がる)、エネルギーが必要となるため血糖値を上げるように働きかけます。そして筋肉は敵と戦うための準備をしますから緊張して硬くなります。

(※ちなみにですが、「表情筋」は敵を威嚇できるように怖い顔つきを作ります)

 

副交感神経はその逆で、身体を「休息させる」、「エネルギーを取り込む(食事、消化)」、「回復させる」のに都合の良い状態に調節します。 例えば呼吸や脈拍は少なくなりますし、血管が太くなって血圧は下がります。消化管は蠕動運動が活発になり消化と栄養吸収を行い、エネルギーを取り込んで疲労から回復しやすい状態を作ります。

 

これらはもともとヒトが「野生」であった頃から動物として備えられている働きです。

日中は活動しやすいように交感神経が優位に働き、夜は休息して回復しやすいように副交感神経が働く。

これが自然なサイクルです。

 

子宮や卵巣も自律神経によって調節されています。

交感神経が活発になっている時には、卵巣への血流が低下することが研究により報告されています。

卵巣血流が低下すればホルモン分泌の低下や「良い卵子」が育ちにくくなるかもしれません

自律神経と子宮との研究では『交感神経が活発になった時に子宮への血流は70%まで低下し、逆に副交感神経が活発になった時には125%まで上昇した。』と報告されています。子宮血流が低下すれば子宮への栄養が悪くなり内膜が厚くなりにくいかもしれません。

ですから、妊活中の方は特に「自律神経バランス」が大切なのです。

 

さて、皆さんの「自律神経バランス」はどうなっているのでしょうか?

 

妊活中の方の日常生活の例

朝、目覚めると交感神経に切り替わります。

質の良い睡眠が取れてない場合、副交感神経が十分に働いてくれてないので卵巣や子宮への血流は少なかったかもしれません。

 

そして、お仕事や家事など活動するための準備をします。

身体を動かすための準備として、心臓が活発に動いて筋肉への血流量を増やします。

筋肉へ血液が増える分、胃腸や卵巣、子宮などへの血流は減ります。

 

スマホやパソコンを見る時には交感神経が働きます。「瞳孔」を開いて目に入ってくる情報量を増やすためです。(野生動物として考えると「敵や獲物を探しやすくするため」)

交感神経が働くので副交感神経の働きは低下し、卵巣や子宮への血流は減ります。

 

日中、ストレスを感じたとします。

前述のように、ストレスを感じると交感神経が働きます。

ストレスと戦うか、逃げるために筋肉への血流を増やします。

筋肉へ血液が送られる分、卵巣や子宮への血流は減ります。

 

食事をすると副交感神経が働きます。

副交感神経は胃腸の血流を増やして蠕動運動を活発にし、食物の消化、吸収を促します。

胃腸への血流は増えますが、卵巣や子宮への血流が増えることはありません。

 

自然界の動物は太陽が沈んだら寝ます。

現代人は太陽が沈んでも起きています。だから交感神経が働いたままです。

夜遅くまでテレビやスマホなどを見ていると交感神経が働いたままです。

副交感神経に切り替わってくれないので、卵巣や子宮への血流は減ったままです。

寝ようとしても、ストレスや不安で色んなことを考えてしまっていると脳への血流は増えますが、その分卵巣や子宮への血流は減ります。

ストレスや不安で寝られずに夜更かししてしまうと、十分に休息を取れていないので次の日の朝もしんどいままです…。

朝、起きてしんどいままだとストレスを感じやすくなります。

 

ストレスを感じると交感神経が優位に働き…という悪循環に陥ります。

 


当院にご相談に来られる方の多くが、上記のような生活パターンに陥っておられます。

このような方々の場合、まず「自律神経を整える」ということから始めます。

自律神経が乱れる原因としては

● 生活習慣の乱れ

● 精神的ストレス

● 物理的ストレス

…などが絡み合っており、これらを丁寧にほどいていくことが必要となります。

 

以下の記事も参考に

→ 自律神経を整える ~背骨と自律神経の関係~

→ 自律神経を整える ~東洋医学的「経穴」との関係から~