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尾てい骨の打撲
転倒や転落して、尾てい骨を傷めることがままあります。
尾てい骨は解剖学的には「尾骨(びこつ)」と言います。
「シッポの名残」と言われていて、ヒトでは不要なものと思われているようですが、実は重要なところです。
骨折の重症例では稀に手術が必要なこともありますが、転位(骨折した骨の位置がずれること)が少ない場合は保存療法で様子をみることが多いです。
しかし、骨折が無く「単なる打撲」と思っていたけれど、「なかなか痛みが取れない」とか「下腹部やお尻の調子が悪い」、「違和感が残っている」など、何らかの症状が残っている方もおられます。
そういう方は、色んな病院や整骨院などを受診されたりしていますが、なかなか解決してもらえず、数年にわたって苦しんでおられたりするケースもあります。
この記事では、尾てい骨打撲の初期対応、どこを受診すれば良いか?、なかなか治らない理由などを解説していきますので、最後までお読みになって参考にしてください。
【尾てい骨の解剖学】
まずはヒトの背骨から。
下の方のオレンジ丸で囲んだところが「尾骨」です。
【尾てい骨を痛めたらどうすれば良い?】
もしも、尻もちなどで「打撲」した場合、まずは整形外科など受診し、レントゲンを撮って「骨折があるかどうか?」の確認が必要です。
≪骨折の場合どのくらいで治る?≫
「骨折」の場合、上述のように「転位」がなければ保存的に様子をみることが多いです。(ギプスなどで固定することはあまりありません。…というか、場所が場所だけに出来ない。)
骨癒合までに「1~2カ月程度」はかかりますので、ご自身で触ったりしないように気をつけてください。
座った時や寝る時に局所が当たって痛い場合は、クッションなどを使って局所に圧迫が加わらないように工夫が必要です。
≪骨折が無い場合どのくらいで治る?≫
「骨には異常なし」と言われたら骨折は無いということですが、「骨以外の軟部組織(下記参照)」はキズついているはずなので、痛みや炎症は少なからず出てきます。
アイシング(氷で冷やす)などで炎症を鎮めていく必要があります。
(※ 痛めてすぐの場合のアイシング法はこちらへ ⇒ 応急処置の基本(RICE処置)
骨折がない場合、程度にもよりますが軟部組織損傷の修復には「1カ月」くらいはかかると思っておきましょう。
参考文献: 八幡直志; 鈴木卓; 新藤正輝. 骨盤輪損傷における仙骨骨折の治療戦略. 日本外傷学会雑誌, 2015, 29.2: 36-42.
特に問題が発生しないで治癒すれば良いのですが、以下のような症状が出てくるケースもあるので参考になさってください。
【尾てい骨の打撲がなかなか治らない時に考えられること】
この周囲は「骨盤底筋群」が付着する部分です。
(下図は尾骨に付着する筋群の例)
尻もちなどをついて、尾骨や周囲の筋群を損傷し、そこがきちんと修復されずに硬い組織になったままになったり(瘢痕化といいます)筋線維が「癒着」を起こして硬くなると、上記の骨盤底筋が機能低下を起こし、骨盤周囲の症状や排尿・排便障害などが起こることもあります。
症状の多くは「強い痛み」よりも、「ガマンできないほどではないが、何か(座り方で局所が圧迫されたり)の時に痛い。」とか、「何となく違和感がある」みたいなものが多いです。これらはほとんど「瘢痕化」が原因と考えられます。
【瘢痕化、癒着とは?】
「瘢痕化」とは、損傷された組織が元の軟らかい組織に再生されず、硬い組織になってしまった状態のことで、「線維化」と呼ぶこともあります。硬くなってしまったことで、周囲組織を圧迫したり締め付けたりすることで痛みや違和感が出てしまうのです。
「瘢痕化」した部分は、硬くなっているので局所の血流が乏しくなります。血流が乏しくなってくると、血液によって運ばれてくる「酸素」や「栄養素」が少なくなる可能性が出てきます。
ヒトの身体の細胞は一定周期で入れ替わりが起きていますが、もしも上記のように「酸素」や「栄養素」が少なくなっている状態で細胞の入れ替わりをしようとしても、新しい細胞を作るための「材料」が少ないため正常な細胞が作られません。
「酸素」や「栄養素」などの材料が少ない状態で作られた細胞は、硬く、脆い細胞ですから瘢痕化が治ることは難しくなってきます。
「癒着」は筋肉を傷めた時によくみられます。我々の身体は組織が傷つけばそこを修復するために「コラーゲン」でくっつけようとします。簡単に言えばコラーゲンは「糊」の役割を果たします。コラーゲンによって修復されるとその部分は白血球などによって貪食されたり、自然に無くなります。(擦り傷した後の「かさぶた」みたいなものです。)
ですが、一部くっついたまま硬くなって残ることがあります。通常はあまり影響が無いのですが、癒着した筋線維が深い所にあったり範囲が大きすぎると動作する時に痛みや違和感が残ったり、触れたり当たったりすると異物感を感じることがあります。
「瘢痕化」も「癒着」も放置しておいても軟らかくなることはあまりなく、その部を柔軟にするための治療が必要なこともあります。(瘢痕化、癒着の治療については後述)
【尾てい骨打撲後にみられる神経損傷】
筋肉が障害されるだけでなく、神経がやられちゃうこともあります。
上の二つの図を見ていただくと分かるように、尾骨は背骨の一番下部に位置し、脊髄からつながった神経が入り込んでいます。
脊髄の下の方からは、自律神経である「副交感神経」が出ていて、
骨盤内蔵器につながっています。
ここから出る神経は、直腸や膀胱、生殖器などの臓器を支配していますので、尾骨(または尾骨周囲)を傷めてしまうとこれら臓器の機能障害を起こす可能性があるのです。
そして、上述のようにこの部に「瘢痕化」や「癒着」が起こると、硬い組織によって神経が圧迫されたり締め付けられてしまい、神経が刺激されて痛みを感じたり、神経が圧迫や締め付けられたりして機能が低下したり、違和感や痺れ感が出ることがあります。
※ 神経は圧迫や締め付けに弱い組織です。
「椎間板ヘルニア」をご存知の方もいると思いますが、これははみ出てきた「ヘルニア」によって神経が圧迫されたり締め付けられたりして痛みや痺れ、麻痺などを起こす病気です。
この部の「瘢痕化」ではヘルニアほど圧迫力は強くないのですが、長期にわたって神経の圧迫、締めつけが起こることで徐々に神経機能が低下してしまいます。
【陳旧化した尾てい骨打撲への処置】
尾骨の損傷は、痛めてからかなりの年数が経っていても「腫れ」やブヨブヨした「浮腫」が残っていることがとても多いです。
ですからまずはその「腫れ」を抑えていくことから始めなければなりません。
当院では自宅での処置として「アイシング」をお勧めしています。
氷をビニール袋などに入れて「氷嚢」を作り、局所にあてておきましょう。
(時間は腫れの程度によります。深部に腫れが残っていることが多いので、30分以上はアイシングしておいてください。)
【なかなか治らない尾てい骨打撲の治療法の例】
● ご自宅での処置
まず局所に炎症、腫れが残っている場合はそれを鎮めていくことから始めます。上記のようにアイシングを行なうようにしてください。炎症、腫れ、浮腫を取り除くために、オイルマッサージなども有効です。(方法が分からない方はお問合せ下さい。)
● 当院での治療法の例
陳旧化したものでは浮腫(むくみ)があることが多く、それによって周囲組織が圧迫されていることもありますので専用の器具で浮腫(局所に水分が多くなっている)を分散させるように処置します。
上述のように痛めた尾骨の周囲が「瘢痕化」して「癒着」している場合には、瘢痕部や癒着した部分への剥離処置がひつようになります。
瘢痕化して硬くなった組織を放置していると徐々に癒着部が拡がり、さらに硬くなっていくケースが多いです。特に尾骨に付着する筋群は細くて小さく、筋肉による補正がかかりにくいため元の位置に戻りにくくなっています。
このような場合、瘢痕組織は筋肉などの線維成分が絡みあって癒着しているため、それをほどくように処置していきます。
瘢痕部を正常組織に入れ替えていく(局所の代謝、再生を促す)には時間がかかることもありますので、出来るだけ早期に治療開始することが望ましいでしょう。
※ 陳旧性のものは保険適応外で実費負担となりますので、ご理解のうえ来院ください。
お困りの方は、初回の無料カウンセリングをご利用いただくと良いと思います。
問診、各種スクリーニングを受けていただいた後、治療法、治療の組み立てをご相談させていただきます。
尚、初回カウンセリング時の治療は行っておりませんのでご了承ください。
※ ご相談、お問合せをされる方は、こちらをお読みになってからお願いいたします。
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