【参考資料】運動器系障害の病期分類

1型(筋障害型)

筋肉の症状を主体とする
ストレスによる過緊張により症状増悪
触診により圧痛点の確認(押さえると痛い、痛気持ち良い)
筋線維の微細な損傷所見(損傷が強度な場合は肉離れ、腱損傷として明らか)
炎症症状の存在(軽度熱感)
神経の過敏性
筋内圧の局所的な上昇
レントゲンを撮っても「異常なし」と言われる
長時間の同じ姿勢(デスクワーク、車の運転、起床時など)で症状悪化する
休息により回復するが、同じ生活パターンの場合再発することが非常に多い
張り感やコリ感を呈することが多いため、マッサージなどで一時的に軽快するがすぐに再発する

※長期化すると「変性筋組織障害型(トリガーポイント型)」に移行することも多い(参考資料その②参照)
微細な筋組織の損傷の繰り返しや血流不全による局所栄養障害、酸素欠乏などにより変性した筋組織により
痛みやしびれ、放散痛などを呈するようになったもの
自律神経症状などを伴うものがあり、不快症状が続くことにより「うつ」などの原因となることもある

 

2型(関節包、靱帯障害型)

何らかの外力(外傷性、交通事故、第3者によるものなど明らかなもの)
何らかの外力(反復性、習慣性、微少な外力であっても蓄積された微細な外力)
などにによる軟部組織の微細な損傷
靭帯、関節包、関節円板、関節軟骨などへの慢性外力による反復性病変
運動時における各種症状(疼痛、違和感、運動障害)

1型、2型については、混在している場合が多い

3型(関節障害型)

X線所見では、骨組織には異常が見られないが、軟骨の磨耗、円板の損傷など
徐々に器質的障害に陥った(もしくは陥ろうとしている)状態
軟部組織から硬組織へ、病変の主体が移行している時期と考えられる
症状としては、筋肉のみならず、関節包、靭帯、など、1型2型が混在したような状態

X線では明らかな硬組織の問題はみられにくいが、軟骨磨耗の所見、アライメントの異常など
変形性所見を予見させるものがみられる傾向が高い
(レントゲンで「骨と骨との間が狭くなってきている」などと言われるもの)

4型(変形性関節症型)

軟骨破壊、骨増殖、関節頭・関節窩の変形性所見
など、X線所見として、変形性関節症の所見が多く目立つようになる
症状は1型~3型にみられるようなものが混在するようになる
関節の機能障害がみられ、運動時痛が著明な場合が多い
※変形が強度に進行した場合、手術適応となるケースもある

5型(その他)

上記に当てはまるもの以外のもの
心因性関節症:精神的因子によると考えられているもの

 

(補足)
※1~3型が混在し、神経を圧迫(もしくは牽引)するようになると、痺れや筋力低下などいわゆる「椎間板ヘルニア」のような症状を呈することがある

※骨格、筋肉、関節の問題は
軟部組織の機能障害から始まり、徐々に硬組織へ病態は進行する(機能障害から器質的障害へ進行する)

※神経系(運動神経系、自律神経系も含む)の機能障害の場合、
器質的病変が進行すると手術適応のものが多くなるため、病期が1~3型の出来るだけ早期のうちに治療をはじめ、変性組織の修復サイクルを活性させることが重要である。

※上記のような「運動器系障害」は臨床的にはよくみられるが、症状的には一時的なものから慢性的な経過をとるものまで様々である。

※頚部関節に上記のような病変が起こるといわゆる「肩こり」、腰部に起こると「腰痛」の症状を呈する。よって単に症状を緩和させるための対症療法でなく、その病期によって治療法を選択することが重要となる。

※骨組織の再編には時間を要するが、出来るだけ早期に筋、靭帯、軟骨、関節包などの軟部組織の再編を促すことが出来るかどうかがポイントとなる。


病態と各治療法、解説は以下リンクにて

【参考資料】運動器系障害の病期分類 その②