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変形性関節症は骨の変形だけじゃない!原因・症状・予防・改善策を徹底解説
高齢化が進む現代において、多くの方が悩まされている「変形性関節症」。
一般的には「骨の変形」というイメージが強いかもしれませんが、実は関節を構成する様々な組織が変性し、日常生活における運動機能が徐々に低下していく病気です。
この記事では、変形性関節症が単なる骨の変形だけでなく、関節構成体と呼ばれる複数の組織の変性が深く関わっていることを分かりやすく解説します。
さらに、進行に伴い現れる筋肉の癒着、線維化といった随伴症状や、拘縮、強縮、強直、萎縮といった状態にも焦点を当て、病状が悪化するとどうなるのか、予防のために今日からできることは何か、そして辛い症状を改善するためにはどのような方法があるのかを徹底的に解説します。
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目次
変形性関節症とは?関節構成体と筋肉の変化が引き起こす慢性的な痛み
変形性関節症は、関節のクッション材である関節軟骨が長年の使用により徐々にすり減り、最終的には消失してしまうことで、関節の痛みや機能障害を引き起こす慢性的な病気です。「変形性」という名前から、骨の変形だけがクローズアップされがちですが、実際には関節を構成する以下の関節構成体全体が変性していくことが病態の本質です。
- 関節軟骨(かんせつなんこつ): 骨の表面を覆い、衝撃を吸収し、関節の動きを滑らかにする役割。変形性関節症では摩耗・変性し、痛みや動きの制限の原因に。
- 軟骨下骨(なんこつかこつ): 関節軟骨の下の骨組織。軟骨の消失により負荷が増加し、硬化や**骨棘(こつきょく)**形成を引き起こす。
- 滑膜(かつまく): 関節内を覆い、潤滑油である関節液を分泌。変形性関節症では炎症(滑膜炎)を起こし、関節液が過剰に分泌されることも。
- 関節包(かんせつほう): 関節全体を包む組織で安定性を維持。慢性化すると厚く硬くなり、関節の動きを制限する。
- 靭帯(じんたい): 骨と骨をつなぎ、関節の安定性をサポート。変形性関節症による不安定性で負担が増加し、緩むことも。
- 半月板(はんげつばん)(膝関節など): 衝撃吸収と安定性を高める線維軟骨組織。変形性関節症の進行とともに変性や損傷のリスクが高まる。
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変形性関節症に随伴する筋肉の変化:癒着、線維化、萎縮、拘縮、強縮、強直
変形性関節症の進行は、関節そのものの変性だけでなく、周囲の筋肉にも様々な影響を及ぼします。これらの筋肉の変化も、症状の悪化に深く関わっています。
- 関節周囲筋の癒着・線維化: 慢性的な関節の痛みや炎症、関節をかばうことによる不動状態が続くと、関節周囲の筋肉や筋膜が異常に癒着したり、硬く線維化したりします。これにより、関節の動きがさらに制限され、痛みが悪化します。
- 関節周囲筋の萎縮(いしゅく): 関節の痛みや動かしにくさから、患部の関節をあまり使わなくなると、周囲の筋肉が徐々に痩せて弱くなります(筋力低下)。筋肉の萎縮は、関節の安定性を損ない、痛みを増強させる悪循環を生み出します。
- 拘縮(こうしゅく): 関節周囲の筋肉や靭帯、関節包などが長期間炎症を起こしたり、動かさない状態が続いたりすると、これらの組織が硬く縮んでしまい、関節の可動域が著しく制限されます。
- 強縮(きょうしゅく): 関節の痛みや不安定さに対して、筋肉が過剰に緊張し、痙攣を起こすことがあります。慢性的な痛みによる持続的な筋肉の収縮も含まれます。
- 強直(きょうちょく): 変形性関節症が極めて進行した場合、関節の骨同士が完全に癒合してしまい、全く動かせなくなることがあります。
変形性関節症は、これらの関節構成体と周囲の筋肉が複合的に変性していくことで進行します。初期の関節軟骨のわずかな摩耗から始まり、進行とともに軟骨下骨、滑膜、関節包、靭帯、半月板が変化し、筋肉の萎縮、癒着、線維化、そして拘縮、強縮などが現れ、最終的には関節全体の機能が著しく低下し、場合によっては強直に至ることもあります。
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変形性関節症が悪化するとどうなる?進行による症状
変形性関節症が進行し、悪化すると、日常生活に様々な支障が出てきます。特に、筋肉の変化や拘縮などが加わることで、以下のような症状がより顕著になります。
- 増強する痛み: 関節の炎症や変形に加え、筋肉の癒着や線維化による柔軟性低下、強縮による痙攣などが痛みを増悪させます。
- 可動域の制限: 関節の変形、周囲組織の癒着や線維化、そして拘縮により、関節の動きが大幅に制限され、日常生活動作が困難に。
- 関節の変形: 軟骨の摩耗、骨棘の形成に加え、筋肉のアンバランスや硬化が変形を助長。
- 関節の腫れ: 滑膜炎による腫れに加え、周囲組織の柔軟性低下が腫れを悪化させる可能性。
- 歩行困難の悪化: 膝や股関節の変形性関節症では、痛み、可動域制限、筋肉の変化、拘縮などが複合的に作用し、歩行が困難に。
- 日常生活動作(ADL)の低下: 着替え、入浴、料理、掃除など、日常生活に必要な動作を行うことが著しく困難に。
- 生活の質の低下(QOL): 慢性的な痛み、可動域制限、筋力低下、拘縮、強直などが、睡眠、精神的な安定、社会生活に悪影響を及ぼし、生活の質を著しく低下させます。
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変形性関節症の予防策:健康な関節を維持するために
変形性関節症の進行を遅らせたり、発症を予防したりするためには、日頃から以下の点に注意することが大切です。筋肉の柔軟性と筋力維持、そして拘縮予防も重要です。
- 適切な体重管理: 膝や股関節への負担を減らし、軟骨の摩耗を抑制する。
- 適度な運動習慣: 関節周囲の筋肉を強化し、関節の安定性を高め、軟骨への負担を軽減させます。ウォーキング、水泳、サイクリングなどの低負荷運動や、筋力トレーニング、ストレッチ、ヨガなどを積極的に行うと良いでしょう。
- 正しい姿勢と動作: 関節への不自然な負担を避け、筋肉の過度な緊張や癒着を防ぐことが必要です。
- 関節への過度な負担の回避: 長時間の立ち仕事や、関節に強い衝撃が加わる動作は避けておきましょう。
- 怪我の予防: スポーツや日常生活での怪我は、軟骨や半月板を損傷し、変形性関節症のリスクを高めます。ウォーミングアップ、ストレッチ、サポーターの使用を心がけておきましょう。
- バランスの取れた食事: 関節の健康維持に必要な栄養素(グルコサミン、コンドロイチン、ヒアルロン酸、ビタミンD、カルシウムなど)を摂取するようにしましょう。サプリメントを第一選択にせず、まずは日常の食生活の改善から始めましょう。
- 積極的にストレッチ、柔軟運動などを行なう: 関節周囲の筋肉や筋膜の柔軟性を保ち、癒着、線維化、拘縮を予防するようにしましょう。
- 適度な筋力トレーニング: 関節の安定性を高め、軟骨への負担を軽減し、筋肉の萎縮を防ぐことが必要です。
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変形性関節症の改善方法:症状を和らげ、快適な生活を送るために
変形性関節症と診断された場合でも、適切な対策を行うことで、症状の進行を遅らせ、痛みを軽減し、日常生活の質を向上させることができます。改善のためには、関節自体の治療に加え、筋肉の変化や拘縮へのアプローチも重要です。
- 生活習慣の改善:
- 体重管理: 減量による関節への負担軽減。
- 運動療法: 痛みに合わせた適切な運動(筋力トレーニング、有酸素運動、ストレッチ、柔軟運動)。専門家の指導のもと、筋肉の癒着や線維化、拘縮を解消する運動も行う。
- 装具の使用: サポーターや杖などで関節への負担を軽減し、歩行をサポート。
- 作業療法: 日常生活動作の工夫や福祉用具の活用による負担軽減。
【変形性関節症の一般的な治療法】
- 薬物療法:
- 内服薬: 鎮痛薬(NSAIDs、アセトアミノフェンなど)、軟骨保護薬(グルコサミン、コンドロイチン製剤など)。
- 外用薬: 湿布や塗り薬などによる局所の痛み緩和。
- 関節内注射: ヒアルロン酸やステロイドによる痛み軽減、関節の動きの改善。
- 筋弛緩薬: 強縮が強い場合の筋肉の緊張緩和。
- 物理療法:
- 温熱療法: 血行促進、筋肉のリラックス、痛みの緩和。筋肉の癒着、線維化、拘縮の緩和にも有効。
- 冷却療法: 急性炎症や痛みに対する炎症抑制、痛みの軽減。
- 電気刺激療法: 神経や筋肉への作用による痛み緩和。筋肉の萎縮の進行遅延にも利用。
- マッサージや手技療法: 筋肉の緊張緩和、癒着や線維化の改善、拘縮の緩和。
- 手術療法:
- 保存療法で効果不十分な場合や、日常生活に支障が大きい場合の関節鏡手術、骨切り術、人工関節置換術など。
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まとめ:変形性関節症と向き合い、より快適な生活を送るために
変形性関節症は、骨の変形だけでなく、関節軟骨をはじめとする様々な関節構成体の変性が複雑に関わる慢性疾患です。進行に伴い、関節周囲の筋肉にも癒着、線維化、萎縮が生じ、拘縮や強縮を引き起こす可能性があります。予防には、適切な体重管理、適度な運動、正しい姿勢、バランスの取れた食事が重要です。改善のためには、運動療法、薬物療法、物理療法などを組み合わせ、筋肉の状態にも積極的にアプローチしていくことが大切です。
もしご自身の関節に不安を感じる場合は、自己判断せずに早めに当院にご相談ください。早期の適切な対応が、変形性関節症と向き合い、より快適な生活を送るための第一歩となります。
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