原因不明のめまいの原因は首だった? ~首の異常から起こる「頚性めまい」とは?~

頻繁にめまいを起こすことはなくても、誰もがめまいの経験はあるでしょう。

厚生労働省が行なっている「2022(令和4)年国民生活基礎調査」によると、めまいの症状を持っている人は約250万人となっています。

めまいの起こす原因も様々で、内耳に問題がある「メニエール病」、「良性発作性頭位めまい」、「前庭神経炎」や、内耳以外に問題がある「中枢性めまい」、「起立性調節障害」などが全体の約70%を占めています。

残りの約30%は「原因不明」とされていましたが、その中には首の異常から起こる「頚性めまい」があることがわかってきました。

 

「頚性めまい」とはどんなものですか?

「頚性めまい」とはその名の通り「頚から起こるめまい」のことで、脳や耳の検査には異常がなく起こるめまいのうち、首のこり、首の筋肉の過緊張や左右のアンバランス、首の骨の変形、首の関節や軟骨の変性など)から起こるめまいのことを言います。

日本めまい平衡学会の定義(1987)では、「頚部に原因があり、多くの場合、頚の回転、伸展により誘発されるめまい、平衡感覚の異常」とされており、脳や耳から起こるめまいと区別されています。

 

頚性めまいの症状にはどんなものがありますか?

首を捻じったり反らしたりする動作、寝返り、寝た状態から身体を起こすなど、首を動かすことがきっかけになってめまいが起こります。

フワフワする浮動性のめまい、グルグル回る回転性のめまいなど、症状や程度も様々です。

めまいの前兆として、首の痛みやコリ感が強くあらわれる人が多いです。

めまいの起こる数日前から直前に、首が詰まる感じ、後頭部やこめかみの頭痛、肩こりや背中の痛みなど、首の筋肉の硬さから起こる症状が出てきます。

めまいを持つ患者さんの約80~90%に「首こり」があることから、首の筋肉とめまいの研究が行われたという経緯があります。

 

頚性めまいの原因にはどんなものがありますか?

ざっくり言うと「首に異常を起こすもの」は頚性めまいの原因となります。

首のこりやストレスによる首の筋肉の過緊張、首の筋肉の疲労、スポーツによる頚部損傷、むち打ちなどによるものもあれば、頚椎の変形や頚椎椎間板ヘルニア、頚部後縦靭帯骨化症などの変形、変性疾患などもあります。

 

頚性めまいの原因となる病気の例

頚部脊柱管狭窄症、頚部後縦靭帯骨化症、頚部椎間板ヘルニア、頚部捻挫、むち打ち(外傷性頚部症候群)

変形性頚椎症、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎椎間関節炎

 

上記のように病名が明らかなものもありますが、レントゲンやMRIでは確認できない微細な筋肉の損傷、血行不良から起こる筋内圧の上昇、癒着した筋肉による自律神経の圧迫や絞扼なども頚性めまいの原因となると考えられています。

(その他には、椎間関節軟骨の摩耗、椎間板変性、筋線維や関節包の癒着などがあります)

 

過去にむち打ちを起こしていたり、スポーツなどで首を痛めたことがあれば首に何らかのダメージが残っている可能性が高いと言えます。

 

明らかに首を痛めたという自覚のない人も多いのですが、寝違え、起床時の首の痛み、慢性的な首こりなども、首の筋線維や椎間関節の微細な損傷です。知らず知らずのうちに頚性めまいの原因が蓄積されている可能性があります。

 


首の異常からめまいが起こるメカニズムはまだ全てが明らかになっていませんが、研究によっていくつかの説があります。

 

1.首の交感神経が障害される(頚部交感神経障害説)

首にある椎骨動脈という血管の周りに交感神経が通っています。頚椎の変形や椎間板の肥厚、椎間関節の炎症によって交感神経が刺激されてめまいが起こると考えられます。

 

2.首の筋肉が硬くなり過ぎる(頚部固有受容器障害説)

筋肉は関節を動かすだけでなく、センサーの役割も果たしています。筋肉が伸びたり縮んだりしているという情報を脳に送り、自分の身体がどういう姿勢をしているか?や、どういう動きをしているか?を無意識のうちに脳が認識しているのです。

特に首の筋肉は、内耳や前庭の神経と関連して姿勢保持や頭の運動を担っているため平衡機能を維持するのに重要な筋肉です。

首の筋肉が硬くなり過ぎたり左右の硬さのバランスが崩れると、平衡機能が低下してめまいが出ると考えられます。
頚性めまいに関与する筋肉はたくさんあり、以下はその例です。(胸鎖乳突筋は特に頚性めまいとの関係が深いと言われています)

 

3.首の血管が障害される(椎骨動脈障害説)

頚椎の横を通っている「椎骨動脈」という血管が、首を捻ったり反らしたり、頭を回したりすることで圧迫されて循環不全を起こしてめまいを起こすと考えられます。

 



(※図では「椎骨動脈」は「脊椎動脈」と書かれています。同じものです。)

このように頚椎が捻じれると血管が引き伸ばされて血液の流れ方が変わります。

 

生まれつきの椎骨動脈の形や頚椎の形によることもありますが、加齢によって少しずつ変形してきた頚椎が椎骨動脈が圧迫してしまうものが多いようです。

若年者でもパソコンやスマホの見過ぎ、不良肢位の習慣化から頚椎のアライメント不良(頚椎がズレたり歪んだりするということ)から椎骨動脈が圧迫されることもあります。

 

以前、「美容院のシャンプー台で首を反らす姿勢が椎骨動脈を圧迫してめまいを起こす」という研究報告もあり、首とめまいの関係性に注目が集まりました。

 

頚性めまいの治療の例

頚性めまいでは首のこり、過緊張、こわばりなど、筋肉の硬さが目立ちますので、筋肉をやわらかくするためのお薬が使われます。(筋弛緩剤)

ストレスなどが強く、過緊張が著明な場合は安定剤が用いられることもあります。

理学療法としては、筋肉の硬さをとるために、関節モビライゼーション、マニュピレーションなどの徒手的療法を行なうこともあります。

(当院での治療については別記事にて解説しています。)

 

まとめ

以下に当てはまる方は、頚性めまいの疑いがあります。

めまいの一般的検査(耳、脳など)をして「異常無し」と言われた。

過去に首を痛めたことがある。(しかもスッキリ治っていない)

よく首が痛くなる。

首こりがある。

寝違えをよく起こす。

整形外科や頚性めまいをみていただける耳鼻科などへご相談してみてください。

 


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「初回無料カウンセリング」では、お困りの症状について問診、各種スクリーニングを受けていただいた後、「原因」を見つけ出し、それに応じた治療法、治療の組み立てをご提案させていただきます。

※ 初回カウンセリングの際には、悪化させていると思われる悪習慣を探し、改善するための日常生活指導をさせていただきます。まずはそれを一定期間実践していただき、それでも改善がみられない場合に治療開始するというお気持ちで構わないと思いますので、お気軽にご相談ください。

(初回カウンセリング時の治療は行っておりませんのでご了承ください)

 

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(参考)

髙橋祥. 頚性めまいの重要性. 日本農村医学会雑誌, 2016, 65.1: 15-24.

近藤明悳. 頸性めまい—診断と治療. 脳神経外科速報, 2009, 19.2: 203-207.

田浦晶子. 4. 頸性めまい. Equilibrium Research, 2018, 77.2: 47-57.