片噛み、横寝から顎関節症 そして顔の歪みへ…。(後編)


こちらのコラム【→ 「片噛み、横寝から顎関節症 そして顔の歪みへ…。(前編)】では、

「顔の歪み」も「顎関節症」も日常生活の悪習慣から「アゴのズレ」を起こしてしまう。

「アゴのズレ」を起こす悪習慣には、「片噛み」や「横寝」などがある。

「顔の歪み」も「顎関節症」も、まずは悪習慣をあらためることで改善が期待できる。

…ということを書きました。

 

(まだお読みでない方は、まずこちらから「前編」をお読みください。 → 片噛み、横寝から顎関節症 そして顔の歪みへ…。

 

ですが、悪習慣をあらためてもなかなか良くならないという場合、「頚椎のズレ」の治療が必要かもしれません。

「頚椎のズレ」は頭の傾きを発生させ、頭の傾きが「顎の骨(下顎骨)のズレ」の原因となるからです。

そのメカニズムを解説していきますので、最後までお読みになって参考にしてください。

 


【顎関節症、顔の歪みの原因】

「顎関節症」も「顔の歪み」も、顎の骨(下顎骨)がズレることで起こります。

 

「片噛み」、「横寝」などは、顎関節の位置異常(アゴのズレ)を引き起こし噛み合わせが悪くなるだけでなく、顔面のフォルムの異常(顔の歪み)の原因となります。しかも、将来的に「顎関節症」に陥る可能性が高くなります。

 


【首のズレと頭の傾きと顎関節症と顔の歪みとの関係】

アゴ(下顎骨)は、頭(頭蓋骨)と靭帯でつながっており、アゴ(下顎骨)は、上から吊るされたようになっています。

顎関節は、口を開けたり閉めたりすることが出来るように、他の関節よりも自由度が高く作られているのです。(ある意味「緩い」とも言えます。)

 

 


吊るされた状態ですから、アゴ(下顎骨)は頭の重心線を守って頭のバランスを取ってくれています。

アゴ(下顎骨)は、いわば測量で使う「錘球」のような役割を持ちますので、正常であれば地面に対して真っすぐ(垂直線上)に位置します。

 


頭が傾いてもアゴ(下顎骨)はうまくバランスを取って、地面に対して真っすぐの状態(垂線)を保つ働きを持っています。

 

※ 読みながらで結構ですので、「頭の傾きと下顎骨の移動」を体感してみてください。

顎の力を抜いて歯を噛みしめずに頭を真っすぐの状態から、左右どちらかに傾けてみましょう。しばらくそのままの姿勢でいると、頭を傾けた側の顎関節からほっぺた辺りが引っ張られた感覚、または頭を傾けた側の顎関節辺りに詰まったような感覚が出てくるはずです。

このように下顎骨は頭が傾いても「垂線軸」を守るように働いてくれているのです。


頭が傾いてもアゴ(下顎骨)は垂線から外れないのですが、頭蓋骨とアゴ(下顎骨)の軸が相対的にズレてしまいます。(隙間が拡がるので、顎関節が不安定になってしまいます。)

 

 

頭が傾いた側の「逆側」の顎関節のズレが大きくなると、顎関節の不安定性(顎関節症初期)を起こし、「顔全体のフォルムに歪み」を起こします。

 


☆「頭の傾きが顎関節の位置に影響を与える」ということを体感していただくために、以下の実験を試してみてください。

 

(実験)頭の傾きは顎関節の位置に影響する

頭の傾きは顎関節の位置に影響を与えます。体感していただくために、以下のような実験をしてみてください。

 

① 頭が真っすぐな状態で座り、何度か歯を軽くカチカチ噛み合わせる。

(噛み合わせた時に、並んでいる歯のどの辺りが一番当たっているか?を感じておいてください。)


② 次に、頭を少し前に倒して、何度か歯を軽くカチカチとかみ合わせる。

(①の時よりも、前の歯がよく当たるようになっているのが分かると思います。つまり「頭を前に倒して、顎が前に移動した」ということです。)


③ 今度は、頭を少し後ろに倒して、何度か歯を軽くカチカチをかみ合わせる。

(奥歯の方がよく当たるようになっているのが分かると思います。「頭を後ろに倒すと、顎が後に移動した」ということです。)


④ 頭を右に傾けて、同じように何度か歯を軽くカチカチとかみ合わせる。

(右に頭を傾けてすると、右側の歯がよく当たるようになっているはずです。これは、頭を右に傾けると左側の顎関節が前に移動し、右側の上下の歯が接近することで起こる現象です。)

 

(※ 詳しくはこちらへ → 顎関節症と首の傾きと顔のゆがみ )

 

つまり、頭の傾きによって顎は移動するため、顎のズレが重度の人は「頭が常に傾いた状態」になっている可能性があるということです。

続けて、下記「頭が傾く理由」をお読みください。

 

【頭が傾く理由】

「なぜ頭が傾いてしまうのか?」という理由はいくつかあるのですが、代表的なものは「背骨が曲がってくるから」ということです。

下図をご覧ください。

背骨の土台となっている骨盤に歪みや傾きが発生すると、それに応じて「腰椎 → 胸椎 → 頚椎」と徐々に曲がってきてしまいます。

顔の歪みや顎関節症がある人は、腰痛や肩こり、首こりなど併発症状を持っていることが多い理由がここにあります。

ですから、状況によっては骨盤や脊柱、下肢から治していかないと、顔の歪みも顎関節症もなかなか治らないことがあるのです。

 

※ こちらの記事も合わせてお読みください  → 顔の歪みは「足組み」「骨盤の歪み」から

 


【治すためには?】

顎偏位が「筋緊張の左右バランスの崩れ」だけであれば特に治療を必要とせず、横寝の習慣をやめること、片噛みの癖をやめることで改善するものが多いです。

しかし、悪習慣を改めても改善しないものや、顎偏位が「顎関節の軟骨(顎円板)」の変性や損傷によるものであれば、軟骨を正常な位置に戻す治療が必要かもしれません。(顎関節の処置については別記事にて)

正常な位置に戻すのは比較的簡単に出来るのですが、そこで「安定」するのが難しいのです。正常位置に戻しても、横寝の習慣、片噛みの習慣に戻ってしまえばまたズレてしまうからです。

安定させるには仰向けで寝る、左右バランスよく噛む習慣を身につけたり、バランスを整えるためのトレーニング、マウスピースなどが必要となることもあります。

上述のように、顎関節のズレに首の傾きが関与する場合は顎関節位を正常に戻す処置に加えて、頭蓋骨、顎関節の土体となる「頚椎の処置」も必要となります。

 


【治療のための確認事項】

1.顎関節の状態確認

「ズレ」の方向、移動幅、痛み・違和感の有無、顎関節運動に関与する筋群の触診

 

2.頚椎の状態確認

(顎関節のズレには頚椎の歪みが関係している場合があります。その場合、顎関節の治療だけでは安定化しづらいため頚部の治療も行う必要があります。)

 

3.日常生活習慣

直接的な顎関節への打撃によるズレでない場合、「日常生活習慣」によるズレがほとんどです。

「片噛み」、「横寝」はその代表的なものですが、それ以外に顎関節に悪影響を及ぼしている習慣動作を探します。

 


顎関節症や顔の歪みなどを起こすメカニズムは非常に複雑で難解なのですが、今回はパターンの一つをご紹介しました。

特に「安定化」には「首の問題」が関係してきますので、完治を目指すのであれば、頚部のズレを整えたうえで顎関節の処置を行う必要があります。

 

※ 「顎関節症」や「アゴのズレによる顔の歪み」には、顎関節の軟骨(関節円板)が関係します。

顎関節の軟骨の再生は難しく、変性や摩耗が起こると元の状態には戻らないと言われていますので、出来るだけ早い処置が望まれます。

 


(参考:西原 克成, 手嶋 通雄, エネルギーを本格的に導入した「顔と口腔の医学」の樹立, 日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学, 2012, 32 巻, 1-2 号, p. 152-168,


【初回無料カウンセリングのご案内】

当院では「初回無料カウンセリング」を行っております。

「初回無料カウンセリング」では、お困りの症状について問診、各種スクリーニングを受けていただいた後、「原因」を見つけ出し、それに応じた治療法、治療の組み立てをご提案させていただきます。

※ 初回カウンセリングの際には、悪化させていると思われる悪習慣を探し、改善するための日常生活指導をさせていただきます。まずはそれを一定期間実践していただき、それでも改善がみられない場合に治療開始するというお気持ちで構わないと思いますので、お気軽にご相談ください。

(初回カウンセリング時の治療は行っておりませんのでご了承ください)

 

「初回無料カウンセリング」へのお申し込みは、下記のお問合せフォームからお願いいたします。

https://funa-in.com/contact/

 


 

顔だけではなく「背骨の歪み」にも不安がある方はこちらもお読みください

→ 顔の歪みは「足組み」「骨盤の歪み」から )

(こちらの記事も参考に ⇒ 手強い顎関節症とフランスパン )

 


 

※ 「仰向けで寝ることが出来ない」という方は、下の記事も合わせてお読みください。

(参考記事 → 高い枕や横向きで寝ることの弊害 )

(参考記事 → え? アナタ、うつ伏せで寝てる人?? )


※ 顎関節のズレ、顔の歪みなどは、横寝だけでなく「うつ伏せ寝」で起こる事も多いです。

軽症であれば習慣を正す事で改善できる場合もありますので、以下の記事も参考になさってください。

→ え? アナタ、うつ伏せで寝てる人??

→ え??  アナタ、まだ うつ伏せで寝てる人???

→ え??? アナタ、うつ伏せで寝てる人??? (完結編)