首の痛み、肩こりの原因?頚椎椎間関節の変形性関節症とその対策

2025.06.13

「首を動かすと痛い」「肩こりがひどくて頭痛もする」といった症状に悩んでいませんか?これらの症状の原因の一つとして考えられるのが、頚椎椎間関節の変形性関節症です。本記事では、頚椎椎間関節とはどのような関節なのか、その構成要素から詳しく解説し、骨の変形だけでなく関節の各組織に何が起こっているのか、そしてどのようにすれば痛みを和らげ、快適な生活を送れるのかを解説します。

まずは知っておきたい!頚椎椎間関節の構成要素

頚椎は、首の部分にある7つの骨(C1~C7)で構成されています。これらの椎骨と椎骨の間には椎間板がありますが、椎骨の後方には、上下の椎骨同士をつなぐ小さな関節があります。これが「頚椎椎間関節(けいついついかんかんせつ)」です。

骨(頚椎の関節突起): 上の頚椎の下関節突起と、下の頚椎の上関節突起が向かい合い、関節を形成します。

関節軟骨: 関節突起の表面を覆っている、滑らかで弾力性のある組織です。首を動かす際の摩擦を減らし、衝撃を吸収する役割があります。

関節包: 椎間関節全体を包んでいる袋状の組織です。

滑膜: 関節包の内側にある薄い膜で、関節液を作り出す役割があります。

関節液: 滑膜から分泌される、粘り気のある液体です。関節軟骨に栄養を供給したり、関節の動きを滑らかにする潤滑油のような役割を果たします。

靭帯: 頚椎椎間関節の周りには、黄色靭帯、項靭帯など、多くの靭帯が存在し、関節の安定性を保つ重要な役割を担っています。

関節周囲筋: 首の周りには、胸鎖乳突筋、僧帽筋、肩甲挙筋、後頭下筋群など、多くの筋肉が存在し、首の動きや安定性を支えています。

骨の変形だけじゃない!頚椎椎間関節の変形性関節症で起こる変化

頚椎椎間関節の変形性関節症は、加齢による椎間板の変性や、長年の負担、姿勢不良、外傷などが複雑に関与して発症します。骨の変形だけではなく、頚椎椎間関節の各所で以下のような状態に陥っています。

関節軟骨の変性・摩耗: 上下の頚椎の関節突起を覆う関節軟骨が徐々に薄くなったり、表面が荒れたり、ひび割れたりします。これにより、骨同士が直接ぶつかりやすくなり、痛みが生じます。

軟骨下骨の硬化・骨棘形成: 関節軟骨が失われると、その下の骨(軟骨下骨)に直接負荷がかかるようになります。これに対し、骨は自身の強度を高めようとして硬化(緻密化)します。また、関節の不安定性を補おうとして、骨の縁にトゲ状の骨の突出(骨棘:こつきょく)が形成されます。この骨棘が神経根の通り道を狭めたり、周囲の組織を刺激したりすることで、首の痛み、肩こり、腕のしびれや痛み(頚椎症性神経根症)、頭痛などの原因となることがあります。

滑膜の炎症(滑膜炎): 関節軟骨の摩耗や骨棘の刺激などにより、関節包の内側にある滑膜に炎症が起こることがあります(滑膜炎)。炎症を起こした滑膜は、過剰な関節液を分泌するため、関節が腫れたり、熱を持ったりすることがあります。また、炎症性物質が痛みを引き起こすこともあります。

関節液の変化: 通常、関節液は関節軟骨に栄養を与え、スムーズな動きを助ける役割がありますが、変形性関節症では、関節液の質が変化したり、量が減少したりすることがあります。

靭帯の変性・肥厚: 頚椎椎間関節の周りの靭帯も、長年の負担や炎症の影響で変性し、厚みを増したり、硬くなったりすることがあります。特に、黄色靭帯が肥厚すると、脊髄の通り道である脊柱管を狭窄させ、頚椎症性脊髄症の原因となることがあります。

関節周囲筋の筋力低下・過緊張: 首や肩の痛みをかばうことで、首や肩甲骨周りの筋肉が弱くなったり、特定の筋肉が過剰に緊張したりすることがあります。これにより、頚椎の安定性が損なわれ、さらに関節への負担が増加するという悪循環に陥ることがあります。

諦めないで!頚椎椎間関節の変形性関節症を改善するためにできること

頚椎椎間関節の変形性関節症と診断されても、適切な対策を行うことで、痛みを和らげ、進行を遅らせ、日常生活の質を維持・向上させることが可能です。以下に、頚椎椎間関節に特化した具体的な改善方法をご紹介します。

正しい姿勢の意識:

座位: デスクワーク時は、モニターを目の高さに、背筋を伸ばして座ることを意識しましょう。頭が前に突き出た姿勢(スマホ首)にならないように注意しましょう。

立位: 耳、肩、股関節が一直線上になるように意識し、猫背にならないように注意しましょう。

スマートフォンやタブレットの使用: なるべく顔を上げて、画面を見るように心がけましょう。長時間使用する場合は、適度に休憩を取りましょう。

 

適度な運動とストレッチ:

ウォーキングなどの軽い運動: 全身の血行を促進し、首や肩周りの筋肉を優しく鍛えます。

首のストレッチ: ゆっくりと首を前後左右に倒したり、回したりするストレッチをこまめに行いましょう。ただし、痛みがある場合は無理に行わないようにしましょう。

肩甲骨を意識した運動: 肩甲骨を寄せたり、上下に動かしたりする運動は、首や肩周りの筋肉の緊張を和らげます。

 

睡眠環境の見直し:

適切な枕の高さ: 横向き寝の場合は、肩から頭にかけて自然なラインになる高さ、仰向け寝の場合は、首のカーブを自然に保てる高さの枕を選びましょう。硬すぎず柔らかすぎない枕を選ぶことも重要です。

寝る姿勢: 仰向け寝や横向き寝が推奨されます。うつ伏せ寝は首を大きく捻るため避けましょう。

 

ストレス管理:

リラックスできる時間を作る: 趣味に没頭したり、音楽を聴いたり、入浴したりするなど、自分なりのリラックス方法を見つけ、実践しましょう。

適度な休息と睡眠: 質の高い睡眠を確保することは、心身の回復に不可欠です。

 

体を温める:

入浴や蒸しタオル: 首や肩の気になる部分を温めることで、血行が促進され、筋肉の緊張が和らぎます。

 

薬物療法:

内服薬: 痛みが強い場合には、鎮痛薬(痛み止め)や筋弛緩薬などが用いられることがあります。

外用薬: 首や肩の痛む部位に直接塗るタイプの鎮痛薬や消炎薬です。

 

理学療法:

理学療法士の指導のもと、適切な運動療法やストレッチ、姿勢指導、首の牽引療法などを受けることで、症状の改善を目指します。

 

神経ブロック注射:

痛みが強い場合には、神経の近くに局所麻酔薬などを注射することで、痛みを遮断する治療法が行われることがあります。

 

手術療法:

上記のような保存療法(手術以外の治療法)で十分な効果が得られない場合や、日常生活に著しい支障がある場合には、手術が検討されることがあります。代表的な手術としては、神経除圧術や脊椎固定術などがあります。

 

諦めずに、首や肩の痛みの改善に向けて一歩ずつ

頚椎椎間関節の変形性関節症による痛みや肩こりは、日常生活に大きな影響を与える可能性がありますが、適切な対策を行うことで、症状をコントロールし、より快適な生活を送ることが可能です。まずは、当院にご相談ください。ご自身の症状や状態を把握し、一緒に最適な治療法や生活習慣を見つけていきましょう。