身体の許容値

2019.07.06

「腕を痛めたんです。」患者さんが来られました。

さて、何をして痛めたのでしょうか?

 

我々はこのような患者さんには必ず、「何をされましたか?」と聞きます。

 

「20kgのダンベルを片手で持ち上げようとして痛めたんです。」という患者さんと

「お箸を片手で持ったら痛めたんです。」という患者さんと

同じように対応することはできません。

 

重過ぎるものを持って痛めた患者さんであれば

「片手で20kgは重過ぎますよね。今後は控えましょう。」で済むかもしれませんが、

お箸を持って痛めた患者さんに

「お箸を持つのは控えましょう。無理せず、誰かに食べさせてもらうようにしてください。」とは

なかなか言えません。

 


この2人の患者さんの痛め方に共通するのはどちらも

「自分の身体の許容値を超えた負担をかけた。」

ということです。

自分の身体の許容値以上のダンベルを持ったから痛めたのであり、

お箸程度のものを持ち上げても痛めてしまうくらい「許容値」が下がっていたということです。

 


どんな患者さんにも当てはまることですが、

治療を組み立てていく時には2つの方向性があります。

 

「出来るだけ身体に負担をかけず、自分の許容値の中での生活を過ごす。」という方向性。

「自分の許容値を上げて、ある程度の負担にも耐えられるような身体を作る。」という方向性。

 

一般的には前者の考え方は高齢者の方などに当てはめているようです。

「もう、トシなんだから無理したらダメ!」とか、

「あんまり動いちゃダメ!」とか。

 

後者はある意味「理想的」に聞こえます。

「今後の生活を考えた時に、身体を強くした方が痛めにくいでしょうし、疲れも感じにくいでしょう。

あまり無理せずに今後の生活を過ごすのと、ご自身の身体を強くして許容値を拡げるのと、どちらが良いですか?」

と尋ねられたら、

「強くなりたいです。」と答える人が多いんじゃないでしょうか。

 

でも何もしないで身体が強くなって、許容値が拡がることは考えにくいです。

何かしないと許容値が拡がることはないでしょう。

許容値を拡げるためには、多少なりとも頑張りと苦痛が伴うかもしれません。

 


どちらが患者さんにとって正しいのかはわかりません。

 

いずれにしても、ある一定の許容値という幅の中で、

その人が快適な生活を過ごしていただけるようにと、日々の臨床を行っております。