NHK「ガッテン!」で紹介  ~後頭下筋群~ 

「肩こり」「首こり」でお困りの方は非常に多くみられます。

単に凝っているという症状だけでなく、「頭痛」や「めまい」「自律神経失調症状」なども併発し、中には「鬱症状」まで抱えてしまうケースもあります。

 

それらの中には後頭部と首の付け根に位置する「後頭下筋群」に原因があるとして、「首コリの原因は後頭下筋群」のタイトルで NHKの『ガッテン!』で紹介されました。気になる方は下記タイトルを検索してみてください。

(※2019年2月13日(水)放送 “新原因”発見! 衝撃の肩・首のこり改善SP にて)

 

こちらの記事では、後頭下筋が原因となるつらい症状の例と見分け方、予防法をご紹介しています。
後頭下筋から起こるものの中には難治性のものもあり、ストレッチやセルフでのマッサージは逆効果のものもありますので、ご注意ください。

(※ 当院で行なっている治療についてはお知りになりたい場合はこちらの記事: 後頭下筋の治療について をお読みください。

 


「後頭下筋」とは

下図は「後頭下筋群」の図です。

「後頭下筋」は解剖学的には、小後頭直筋、大後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋の4つがあり、まとめて「後頭下筋群」と呼ばれています。かなり深いところにある筋群で、頭蓋骨と第1頚椎、第2頚椎とつながっています。

 

深部にある小さい筋肉なのでこりやすく、頭部(脳)に近い所にあるためこり過ぎると脳血流に悪影響を与えたり、自律神経失調症状を引き起こすことがあります。


首こり、肩こり、後頭下筋が凝る原因

慢性的な首こり、肩こりの原因である後頭下筋がこるのは以下のような作業、生活習慣にあります。

1.長時間の同じ姿勢

座りながらの作業、立ち仕事、車の運転などお仕事で長時間同じ姿勢をしている人は後頭下筋へ常に負担がかかっています。

お休みの日であっても、寝過ぎ、ソファで寝ころびながらテレビやスマホなども長時間になると後頭下筋にはよくありません。

 

2.パソコン、スマホなどの見過ぎ

後頭下筋は重たい頭を支える働きを持つ筋肉であると同時に目を使う時に緊張することが知られています。

デスクワーク、パソコンやスマホを見る時などは姿勢を保持しながら目を使いますのでダブルで負担がかかります。

寝ながらでもスマホを見て目を使うと後頭下筋は緊張しますので注意しましょう。

 

3.前かがみ、背中が丸くなる姿勢(猫背姿勢)

パソコン作業やデスクワークで集中していると背中が丸くなってしまうことがよくあります。

前かがみ、猫背姿勢は重たい頭が前に傾き首すじの後ろの筋肉に負担が大きくなるためコリを起こしやすくなります。

 

4.首すじが冷える

夏場であればクーラー、冬場は襟元が開いた服装などで首すじを冷やしてしまうと、後頭下筋だけでなく頚部の筋肉の過緊張を起こし血行が悪くなりコリを起こします。

 

5.ストレートネック、猫背など不良姿勢(骨格の問題)

ストレートネック、猫背などは首すじから背中の筋肉への負担が増え、疲労性の首こりや肩こりを起こしやすくなります。

運動不足、筋力低下によるストレートネック、猫背は筋肉性で一時的なものが多いのですが、頚椎や胸椎の可動性が低下した関節性のものは動きが悪くなりすぎ慢性的なコリになりやすいので注意が必要です。

 

6.ストレス

精神的な疲労やストレスは自律神経バランスが崩れ、後頭下筋の過緊張を起こします。

後頭下筋は、自律神経によって筋肉の緊張度を調節する「筋紡錘」というセンサーが多く分布しているところです。

精神的なストレスはこのセンサーを過敏に反応させ、身体をかたくこわばらせてしまうのです。

 

日常生活で注意が必要な姿勢、動作についてはこちらの記事: 後頭下筋群を守るために ~やってはいけないNG集~ で詳しく解説していますので合わせてお読みください。

 


後頭下筋のこりが原因となる症状、疾患の例

後頭下筋のこりが原因となる症状は数多くみられます。

小さな筋肉なので異常を見つけにくく、筋肉なのでレントゲンでもうつらないため「異常なし」で済まされるケースもたくさんあります。

代表的な症状を書いておきますので当てはまる方は参考になさってください。

 

1.後頭下筋がガチガチ ~慢性的な首こり、肩こり~

後頭下筋は、深部にある小さな筋肉ですが、大きさの割に「重たい頭部の固定」、「姿勢保持」、「眼の動きの補助(後述)」という重要な役割を持ちます。

ですから後頭下筋は常に働いているため疲労しやすく、血流が悪くなると回復しにくい筋肉です。

筋肉は疲労すると硬さを増し、さらに血流が低下するため筋肉は栄養状態が悪くなって回復が悪くなる…という悪循環から慢性化しやすいのです。

後頭下筋がガチガチにこり過ぎて硬さが増してくると首の動きが悪くなり、「寝違え」を起こしやすくなったり、「朝起きた時に痛い」という症状が増えてきます。

※ 「寝違え」は、後頭下筋のこりと頚椎のズレによって起こることが多く、頚椎椎間板ヘルニアを引き起こすことがあります。

詳しくはこちらへ → 寝違え

 


2.後頭下筋によって神経が締め付けられる ~大後頭神経痛~

大後頭神経は、頭の骨(後頭骨)と首の骨(第1頚椎)の間を通って、後頭部の皮膚に分布します。

大後頭神経は、通常は後頭部から頭頂部にかけての皮膚知覚を伝えているのですが、後頭下筋の過緊張やこりによって締めつけられて過敏になり、神経痛を起こすことがあります。

(大後頭神経は、顔面や頭部に分布している「三叉神経」とリンクしているため、大後頭神経痛から三叉神経痛を助長することがある厄介な神経です。)

痛みの質としては、違和感、しびれ感、チクチク、ピリピリ、ズキズキなど持続的に出てくるものもあれば、ビリッと電気が走るような瞬間的な痛み、まで様々です。

大後頭神経痛は、「頚椎椎間板ヘルニア」や「変形性頚椎症」などの病気から後頭下筋を含めた首まわりの筋肉が硬くなることで起こることもあります。

その他、頚椎の捻じれから後頭下筋の過緊張を起こして神経が障害されるものもあります。

悪習慣の代表例である「高まくら」や「横寝」では頚椎を捻ってしまうので、後頭下筋や頚椎へのストレスが大きくなりこりを悪化させます。

ですから、後頭下筋が悪い人が寝る時の姿勢は「あおむけで真っすぐが基本」です。

 

(後頭下筋のこりを予防するための寝る時の姿勢や枕についてはこちらの記事で詳しく解説しています)

→ 高い枕や横向きで寝ることの弊害

 


3.後頭下筋のこりから起こる筋緊張性頭痛

前述の大後頭神経も頭痛のひとつですが、頭痛の患者さんの大半を占めている「筋緊張性頭痛」も後頭下筋のこりから起こります。

筋肉のこりが強くなると「トリガーポイント※1」を形成し、後頭部のこり感だけでなくこめかみや頭部の筋肉の過緊張から起こる「筋緊張性頭痛」が出てくるようになるのです。

頻度の高い頭痛で何とか頭痛薬でしのいでいる人が多いのですが、こり過ぎた後頭下筋が器質的変性(癒着、線維化)を起こしている場合は効果が出にくい傾向があります。

 

※1:トリガーポイントとは?

筋肉が変性、癒着、線維化を起こすことで、局所以外にも放散痛や関連痛を出すようになったものです。圧迫を加えると他の部位に痛みを出すことから「引き金点=トリガーポイント」と呼ばれています。後頭下筋にだけ形成されるのではなく、筋肉であればどこにでも形成される可能性があります。腰や骨盤まわりの筋肉にトリガーポイントが形成されると腰痛や足の痺れが出てくることがあります。

トリガーポイント化した後頭下筋をストレッチでやわらかくしたり、セルフでのマッサージでほぐす、というのはちょっと難しいかもしれません。トリガーポイント化した筋肉は、硬くなり過ぎて正常組織ではなくなったもの(むずかしく言えば「器質的変性」を起こした組織)なので、正常組織に入れ替わらない限りこりは繰り返します。ストレッチなどで正常組織に入れ替わるには数カ月はかかります。)

(※ トリガーポイントについてはこちらの記事で詳しく解説しています →  トリガーポイント(筋筋膜性疼痛症候群

 


4.目の奥の痛み、眼精疲労

後頭下筋は、「眼球運動と連動して緊張する」という性質を持つことが研究で分かっています。

「物を見る」という動作をする時に、頭がグラグラと安定していない状態ではしっかりと見ることが出来ませんので、物を見る時には必ず「後頭下筋」が緊張して頭部を固定しようとするんですね。(寝た状態でも座った状態でも目を使うと後頭下筋は緊張します)

現代人は、スマホ、タブレット、パソコンと、目を酷使していますので、その時の姿勢による首まわりの過緊張と、目を使うことでの後頭下筋の過緊張が合わさってこりを起こしやすくなっています。

 

下の図は、後頭下筋にトリガーポイントが形成された場合にみられる「頭痛」、「眼の奥の痛み」の例です。

 

「肩こり」、「首こり」がひどくなると頭が痛くなったり、目の奥にまで痛みが出てくるというパターンの方は、後頭下筋がこり過ぎてトリガーポイント化している可能性がかなり高いです。

 

※ 目の奥の痛み、眼精疲労についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

→ 眼精疲労ってどんなもの? どうしたら良くなる?

 


5.後頭下筋のこりは自律神経失調症の原因

後頭下筋のこりは「自律神経失調症」を起こすことが研究によって分かってきました。

正確に言うと、後頭下筋のこりだけで起こるのではなく、首にある他の筋肉のこりや背骨の歪みが自律神経を圧迫することなど複数の要因が重なって起こります。

 

首まわりの筋肉の異常から自律神経失調症が引き起こされるものは「頚性神経筋症候群」と呼ばれます。

首の筋肉のこりが原因となり、首の痛み、頭痛、めまい、吐き気、だるさ、動悸、目の疲れ、やる気が出ないなど多岐にわたる症状がみられるようになる疾患です。

東京脳神経センターの”首こり博士”松井孝嘉先生が発見、提唱されたもので、自律神経失調症の多くは「原因不明」とされていましたが、研究により後頭下筋のこりが自律神経失調症を引き起こすことが明らかになってきています。

 


6.後頭下筋のこりから「うつ」へ

前述のように「頚性神経筋症候群」では、首こりや肩こりだけでなく自律神経失調症状がみられるようになります。

このような「不快症状」が続き、それがさらなる「精神的ストレス」となってくるとうつ状態を引き起こすようになってきます。

後頭下筋のこり、首こり、肩こりなど首の筋肉異常から起こるうつは「頚性うつ」と呼ばれ、通常の向精神薬やカウンセリングに「首の治療」を行なうことで改善しやすいという研究報告があります。

 

「頚性神経筋症候群」と「頚性うつ」は別の疾患ではなく、同じレールの上に乗っているものだと言えます。

ですから、首こりや肩こりもこじらせると「自律神経失調症」や「うつ」に陥る可能性があるため注意が必要です。

 

頚性神経筋症候群、頚性うつについての関連記事

 


【後頭下筋の治療法の例】

上記のような問題が発生した「後頭下筋」の治療には、

▶ 後頭下筋のトリガーポイントに生理食塩水を注射する

▶ 後頭下筋のマッサージ (※深い部にあるのでアプローチが難しく注意が必要)

▶ 後頭下筋への鍼治療

…などがあります。興味のある方は「後頭下筋」、「トリガーポイント」で検索すると色々とみつかると思います。

 

 

当院での後頭下筋への治療例

当院では後頭下筋のこり、リガーポイントの形成原因は「頚椎の偏位」として捉え、筋線維化、癒着の除去と頚椎配列の正常化を目的としたアプローチを行なっております。

詳しくはこちらの記事「後頭下筋への治療について」をお読みください。

 

治療も大事ですが、後頭下筋のコリやトリガーポイントは日常の悪習慣で起こります。今すぐやめて欲しい悪習慣の例は「治したいならコレするな! 後頭下筋を痛めるNG集」 に詳しく解説していますので合わせてお読みください。

 


硬くなった後頭下筋をゆるめるツボ

以下のツボは後頭下筋のこりを取るためによく使われるツボです。

ご自身のメンテナンスのために参考にしてみてください。

首のうしろにあるツボ 天柱 風池

風池(ふうち)

耳の後ろにある骨の出っ張った部分と、後頭部のくぼみの中間あたりで押さえて反応のあるところ

天柱(てんちゅう)

首すじの後ろにある筋肉(僧帽筋)の外側のくぼみで押さえて反応のあるところ

 

※ 風池、天柱は押し過ぎに注意!

風池、天柱のツボを押さえて「心地よい」くらいであれば構いませんが、「痛い」と感じる場合はツボ押しはやめておきましょう。

気持ち良いと感じるからといって強く押したり、何度も何度も押し過ぎると筋肉を痛めてしまうので注意が必要です。

 

後頭下筋をやわらかくゆるめるストレッチ

後頭下筋は深部にあるため伸ばしにくい筋肉です。一般的な「筋肉を伸ばすストレッチ」は効果が出にくいことが多いです。

後頭下筋をゆるめるためには「緊張(筋収縮)」と「緩和(脱力)」を交互に繰り返す「漸進的筋弛緩法」が効果的です。

「漸進的筋弛緩法」の具体的な方法はこちらの記事: ガチガチに硬くなった後頭下筋を緩めるストレッチ で解説していますので合わせてお読みください。

 


 

当院での後頭下筋への治療例

当院では後頭下筋のこり、トリガーポイントの形成原因は「頚椎の偏位」として捉え、筋線維化、癒着の除去と頚椎配列の正常化を目的としたアプローチを行なっております。

詳しくはこちらの記事「後頭下筋への治療について」をお読みください。

 


 


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