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首の痛み・肩こりが続くあなたへ─関わる複数の組織を知ることが、改善への第一歩
「朝起きると首が重い」「デスクワークの後、肩から首にかけてガチガチになる」「スマホを見た後、首の後ろが痛くて上を向けない」──こうした症状は、多くの方が日常的に経験していることではないでしょうか。
首の痛みは「疲れのせい」「寝違えただけ」と軽く見られがちですが、症状が慢性化したり、腕のしびれや頭痛を伴うようになると、日常生活の質を大きく損なうことがあります。
首(頸部)には、椎間板・靱帯・関節包・筋肉・神経・血管といった多くの組織が密集しています。「首が痛い」という症状の背景には、これら複数の組織が複雑に絡み合っていることがほとんどです。どの組織がどのように関わっているかを理解することが、自分の症状と向き合い、適切なケアへつなげる第一歩になります。
首はなぜ痛みやすいのか──頸部の構造と特性
頸椎(けいつい)は7つの椎骨からなり、約4〜6kgある頭部を支えながら、前後左右・回旋という複雑な動きを担っています。可動域が非常に広い一方で、脊髄・椎骨動脈・多数の神経根が通過する、構造的に繊細な部位です。
さらに現代人は、スマートフォンやパソコンの使用により、頭部を前方に突き出した「前傾姿勢」を長時間とりがちです。頭が前方に2〜3cm傾くだけで、頸椎にかかる負荷は通常の2〜3倍に増加するといわれています。こうした日常的な姿勢の積み重ねが、首の痛みの大きなリスク要因になっています。
首の痛みに関わる複数の組織とそれぞれの症状
「首が痛い」と感じるとき、その痛みを生み出しているのはひとつの組織ではありません。以下の組織が、それぞれ異なる形で症状に関与しています。
① 椎間板(頸椎椎間板)
頸椎の椎骨と椎骨の間にあるクッションで、繊維輪と髄核からなります。加齢や繰り返しの負荷によって変性・突出すると、周囲の神経や脊髄を刺激します。これが頸椎椎間板ヘルニアの状態です。
こんな症状が出やすい
- 首の奥が深く痛む、前かがみで悪化する
- 腕・手指にビリビリとしびれや痛みが走る(神経根への影響)
- 手の細かい動作(箸・ボタン)がしづらくなる(脊髄への影響)
- くしゃみや深呼吸で首から腕に電気が走るような感覚
② 後縦靱帯・関節包・滑膜
後縦靱帯(こうじゅうじんたい)は脊柱の後面を走り、椎間板の後方突出を抑える役割があります。関節包と滑膜は頸椎の小関節(椎間関節)を包む組織で、炎症が起きると動作時の痛みやこわばりを引き起こします。むち打ちや急激な外力では、これらの組織が直接損傷を受けます。
こんな症状が出やすい
- 朝起きたとき首が固まっていて動かしづらい
- 首を後ろにそらすと痛みが出る、または詰まる感じがする
- 交通事故や急激な動作の後から首の痛みが続く(むち打ち様症状)
- 頸部を動かすと「ゴリゴリ」「ポキポキ」と音がする
③ 頸部の筋肉(僧帽筋・胸鎖乳突筋・深部頸筋)
首と肩まわりの筋肉は、常に頭部を支えるという持続的な負荷にさらされています。特に表層の僧帽筋(そうぼうきん)や胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)は緊張しやすく、深部の頸筋群(多裂筋・半棘筋など)は、疲労や不良姿勢で機能が低下しやすい組織です。筋肉の緊張・血流低下が持続すると、筋膜に硬結(こり)が形成され、慢性的な痛みやだるさの原因になります。
こんな症状が出やすい
- 肩から首にかけて「板のように」こり固まる
- デスクワークや運転後に首が重だるく、頭まで痛くなる(緊張型頭痛)
- 首を回すと特定の方向だけ動きが制限される
- 首・肩を押すと「痛気持ちいい」硬い部分がある(筋硬結・トリガーポイント)
- 目の疲れ、目の奥が痛くなる(眼精疲労)
④ 末梢神経(神経根・腕神経叢)
頸椎から出る神経根は、肩・腕・手指へと枝分かれして伸びています(腕神経叢)。椎間板や骨棘(こつきょく)による圧迫、あるいは筋肉のこりによる絞扼(こうやく)が起きると、腕や手のしびれ・痛み・脱力が生じます。神経への刺激が続くと、感覚異常や筋力低下が慢性化するリスクがあります。
こんな症状が出やすい
- 腕・指先がしびれる、特定の指だけ感覚が鈍い
- 腕を上げると楽になる、または逆に腕を下ろすと痛みが強くなる
- 握力が低下してきた、物を落としやすい
- 夜間に腕がしびれて目が覚める
⑤ 椎骨動脈・循環系
頸椎の横突起の中を通る椎骨動脈は、脳幹や小脳への血流を担っています。頸椎の変性や不良姿勢によって圧迫・刺激を受けると、めまいや吐き気、頭痛などの症状が現れることがあります。首の痛みに加えてこうした症状が伴う場合は、循環系の関与も考慮が必要です。
こんな症状が出やすい
- 首を動かしたときにめまいやふらつきが起きる
- 頭の後ろから頭頂部にかけてズキズキ痛む
- 首を後ろにそらしたり回旋させると気分が悪くなる
首の痛みが起きる原因・リスク要因
首の痛みには、急性のものと慢性・再発を繰り返すものがあります。それぞれ関与する組織や対処のポイントが異なります。
急性期の主な原因
- 寝違え:睡眠中の不自然な姿勢による筋肉・関節包の急性炎症
- むち打ち(頸椎捻挫):交通事故や衝突時の急激な屈伸運動による靱帯・関節包・筋肉の損傷
- 急激な負荷:重いものを持ったとき、スポーツ中の衝突・転倒
慢性化・再発のリスク要因
- 長時間のスマートフォン・パソコン操作による前傾頭位姿勢(ストレートネック・スマホ首)
- 加齢による頸椎の変性・椎間板の水分減少と弾力低下
- 深部頸筋群の筋力低下(頭部を支える力の不足)
- 精神的ストレスや睡眠不足による慢性的な筋緊張
- 枕や寝姿勢の不適切さによる頸椎アライメントの乱れ
- 冷えや血流不足(循環系への影響)
日常ケア・リハビリ・予防
首の痛みを改善・再発予防するためには、痛みが出ている表面だけでなく、関わる複数の組織それぞれに働きかけることが重要です。以下のケアを症状の段階に合わせて取り入れてみてください。
急性期(発症まもない・強い痛みがある時期)
- 首を無理に動かさず、安静を保つ(炎症の悪化を防ぐ)
- 痛みが強い場合はソフトカラー(頸椎カラー)で一時的に固定することも有効(使用は短期間・医師の指示のもとで)
- 温めると炎症が悪化する場合があるため、急性期は冷却を検討(専門家に相談)
- 痛みが強い・しびれが伴う場合は早めに受診
慢性期・リハビリ期(痛みが落ち着いてきたら)
- 深部頸筋のトレーニング(チンタック):あごを引いて後頭部を後ろへ押し、10秒キープ×10回。頸椎の安定性を高めます
- 僧帽筋・肩甲挙筋のストレッチ:耳を肩に近づけるように横に倒し、反対側の肩を下に引き下げ30秒キープ
- 胸鎖乳突筋のリリース:斜め上を見るように首を伸ばし、筋肉の緊張をほぐす
- 肩甲骨まわりの運動(肩甲骨を引き寄せるストレッチ):頸部筋肉の負担を軽減する
- ウォーキングや軽い有酸素運動:全身の血流改善と筋緊張の緩和
姿勢・生活の工夫
- スマホ・パソコンの画面を目線の高さに近づける(前傾頭位を防ぐ)
- デスクワーク中は1時間に1回立ち上がり、首・肩を軽くほぐす
- 枕の高さを調整する:仰向けで頸椎が自然なカーブを保てる高さが理想
- 就寝時はうつ伏せを避ける(頸椎への負担が大きい)
- 冷えが強い方は首・肩を温め、血流を維持する
こんな症状があったら早めの受診を
以下のような症状がある場合は、自己ケアだけでなく専門機関への受診が必要です。特に脊髄への影響が疑われる場合は、早期対応が重要になります。
- 腕・手指のしびれや脱力が続く・悪化している
- 両手がしびれる、または両足に力が入りにくい(脊髄への影響の可能性)
- 箸・ボタンなど細かい動作がしづらくなってきた(巧緻運動障害)
- 歩行がふらつく、階段の昇降が不安定になった
- 排尿・排便のコントロールに異常を感じる
- 首の痛みに加え、めまいや吐き気が頻繁に起こる
- 症状が2〜3週間以上続いても改善しない
特に両腕・両足のしびれや歩行障害は、頸椎症性脊髄症の可能性があります。放置すると症状が進行するリスクがあるため、早めに整形外科または専門の医療機関を受診してください。
まとめ
首の痛みは、椎間板・靱帯・関節包・筋肉・神経・循環系など、複数の組織が複雑に絡み合って生じています。「首がこるだけ」と感じていても、その背景では複数の組織が少しずつダメージを受けているケースは少なくありません。
急性期には炎症を広げないよう安静と適切な処置を優先し、慢性期には関わる組織それぞれに働きかけるリハビリ・ストレッチ・生活習慣の見直しを組み合わせることが、症状の改善と再発防止につながります。
「どの組織が自分の症状に関わっているか」を意識しながら、専門家と連携して対処策を考えていくことが、首の痛みと長くつきあわないための大切な視点です。
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