院長ブログ- BLOG -
筋膜リリース
2022.03.18
最近、「筋膜リリース」についてよく質問を受けます。
健康雑誌やテレビ、インターネットなどで、「肩こり」や「慢性腰痛」などに「筋膜リリースが効く!」と話題になっているようです。
「筋膜リリース」の理論は肩こりや腰痛などに対して有効なこともありますが、間違った方法で行なうと余計に筋肉を硬くしてしまったり、筋線維を傷つけて炎症を起こしてしまうこともありますので注意が必要です。
筋肉の解剖のキソ
筋肉は「筋線維」で出来ています。「筋線維」は長い糸みたいなものですが、それ自体に収縮性があります。
それが束のように何本も集まり、袋状の「筋膜」によって包まれている状態です。一本一本の筋線維が収縮することによって、筋肉全体が収縮し関節を動かします。
筋膜はコラーゲンと水分で出来ていて、筋肉が収縮する時に発生する摩擦を少なくする働きを持ちます。
筋膜の水分が潤滑油として働いて滑りを良くし、スムーズに筋肉が収縮できるようにしているワケです。
しかし、ケガや日常生活動作などによって筋膜や筋線維は傷つき、きちんと修復されない(案外多い)とその筋膜の水分は少なくなり、硬く、もろくなって、潤滑油としての働きが低下してしまいます。(粘性が高くなるため)
そのような状態が続くとスムースな収縮が出来なくなって硬くなり(それが「肩こり」の状態)、筋膜と筋線維、筋線維同士がくっついて「癒着」してしまいどんどん筋肉の働きが低下してしまいます。
簡単に言えば、その「癒着」を剥がしてしまおうというのが「筋膜リリース」の目的のひとつです。
もう少しだけ補足しておくと、上記のように、筋膜と筋線維、筋線維同士が「癒着」してしまうと、「滑走不全」という状態に陥ります。
筋肉が収縮する際に筋線維同士が「滑走」するのですが、癒着があるとうまく「滑走」出来ないため動きが悪くなります。
実は「滑走不全」はめずらしいものではありません。
「昔は運動してたから身体も軟らかかったんです。」という方でも、年齢を重ねるとどんどん身体が硬くなってきます。これは筋肉や関節の周りの組織が滑走不全を起こして柔軟性が悪くなっている状態です。(柔軟性の悪さに運動不足などで筋力低下が加わるとケガを起こしやすくなります。余談ですが。)
その「滑走不全」を改善しようとするのが「筋膜リリース」の本来の目的です。ですから、単に剥がそうとして力まかせにしてしまうと筋肉や筋膜を傷つけてしまい逆効果になるんですね。
筋肉癒着のモデル図
本来であれば、自分で運動して筋線維を伸び縮みさせれば癒着は剥がれます。ゆっくりと、少しずつ筋肉を動かすことで筋線維間の柔軟性を取り戻せるのですが、運動不足で筋肉を動かしていないと癒着は進行していきます。
「もみかえし」、「もみ起こし」の起こる理由
強めのマッサージなどを受けて「もみかえし」とか「もみ起こし」とかが起こることがありますがそれは、もむことでその癒着を「乱暴に剥がしてしまった」ことによって炎症を起こしたことが原因の一つと考えられます。
ですからむやみにもめば良いわけではなく、出来るだけ安全に癒着を剥離し、筋細胞や筋膜を傷つけることなく、筋膜と筋線維、筋線維同士の間の「潤滑」を促す必要があるということです。
(ですから単に「揉みほぐす」ということが「筋膜リリース」になっているとは考えにくいかなと思っています)
筋肉、筋膜の癒着を取る方法はいくつもあると思われますが、当院では特殊なローラーにより「層状圧」を加えることで、筋膜間、筋線維間の隙間に水分がいきわたるようにし、十分な潤滑状態を作り出してスムースな収縮機能を取り戻させるようにしています。
筋肉は線維状の構造をしています。その線維方向と平行に圧を加えることで「層状圧」が発生し、癒着部に細胞間潤滑を取り戻すことが出来ます。この方法であれば、筋線維を傷つけることなく安全に癒着部を剥がすことが出来るわけです。
ご家庭で行なうのであれば、ローラーが無くてもオイルなどを塗って皮膚の摩擦を減らし、線維方向と平行に圧を加えることで同じ効果が得られると思います。
これを一定期間行うことで、筋線維同士、筋膜と筋線維の間にある「潤滑」を取り戻すことが「第1段階」、その後、新たに再生される筋線維の「線維方向」をそろえていくことが「第2段階」となります。
※ 筋肉の再生には個人差はありますが、数週間(4w~8w)かかりますので継続が重要です。
※ 補足 ストレッチによる「筋膜リリース」について
「ストレッチ」なども筋膜や筋線維の癒着を取る目的でされていることもあるようですが、症状の原因となりやすい「深部筋」はストレッチがかかりにくいのと、無理に行うと傷めることもあるかもしれませんのでご注意ください。
※ 追加補足
「筋膜リリース」で検索していると、「ファシア」というキーワードにたどり着くかもしれません。
fascia(ファシア)とは体内に存在する「線維性の立体網目組織」のこととされており、「筋膜」はその中に含まれているものです。興味のある方は「ファシア」で検索してみてください。現在「原因不明」とされているものの中には「ファシア」の機能障害によるものも多いように考えられます。
(参考文献:佐藤 勇太, 小野 武也, 廣瀬 勇太, 田中 航, 細野 晴菜, ラット腓腹筋とヒラメ筋間における結合組織の剥離が足関節背屈可動域制限に与える影響に関する研究, ヘルスプロモーション理学療法研究, 2022, 12 巻, 3 号, p. 125-130,)
(参考文献:竹井 仁, Myofascial Release(筋膜リリース), 理学療法科学, 2001, 16 巻, 2 号, p. 103-107,)
- お電話でのご予約06-6334-0086 お電話でのご予約06-6334-0086
-
ご予約・お問い合わせ
フォームはこちら