帯状疱疹後神経痛へのアプローチ ~神経周囲組織の瘢痕化に対して~

帯状疱疹後神経痛とは

「帯状疱疹」は、水痘(水ぼうそう)のウィルスによって起こる病気です。

水痘にかかった後でもウィルスが身体の中に潜んでいて(神経に多い)、免疫が弱くなってくるとウィルスを抑え込む力が弱くなり、再活性化を起こして発症します。

 

皮膚がピリピリするような痛みから始まり、徐々に皮膚に赤みや水ぶくれなどの症状(皮疹)が出てきます。

ウィルスが潜んでいた場所によって発症部位は違いますが、背中から胸(肋間神経)や顔(三叉神経)が多く、腕や足に出てくることもあります。

 

神経と神経周囲の炎症ですから、免疫によって炎症が落ち着けば症状も消えていきます。

しかし、一部の人では、皮疹が治った後に痛みや感覚異常が残ることがあり、「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれています。

 

疫学的には、帯状疱疹にかかった人の5%~20%にみられ、特に60~65歳以上の方では20%、80歳以上の方では30%以上に発症し、年齢が高くなると罹りやすくなります。

根本的な治療法は確立されておらず、難渋しやすい疾患です。

 

帯状疱疹の初期は「炎症」による痛み、症状が強く現れていますので「炎症を抑える」ために、NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)、アセトアミノフェンといった消炎鎮痛薬を用いることが多いようです。

 

しかし、炎症がおさまった後に起こる帯状疱疹後神経痛は、「神経のダメージによる痛み(神経障害性疼痛と呼ばれます)」ですので、上記のようなお薬はあまり効かなくなってくるため、プレガバリン(リリカ)など、神経障害性疼痛に効果がみられるお薬に切り替える必要が出てきます。(※詳しくは主治医の先生にご相談ください)

 

帯状疱疹後の周囲組織の瘢痕化

帯状疱疹の初期には局所に炎症が著明にみられます。

炎症により、局所の発熱や腫脹による内圧上昇、細胞間浮腫、発痛物質産生過多、二次的低酸素状態による細胞障害など、様々な病態が混在することになります。

 

身体はダメージを受けた組織を修復しようとして、局所に血管を作ります。(修復に必要な酸素や栄養素、老廃物除去のための白血球を運ぶためです)

 

きれいに元通りの組織になれば良いのですが、一部に「瘢痕化組織」が残ることがあります。

瘢痕化組織は血管や硬くなった結合組織などが不規則に癒着した状態になっていて(火傷の痕のようなイメージです)、これが神経を圧迫したり締め付けたりすることが「帯状疱疹後神経痛」の原因とひとつと考えられています。

瘢痕化した組織は固定化して元の状態には戻りにくく、これが「帯状疱疹後神経痛」が長期化する理由となっています。

 

自宅で出来るケア

瘢痕化が固定せず、軟らかさが残っている場合には、癒着の除去、血流改善、局所浮腫の軽減のために、軽くさするようにマッサージしても良いでしょう。(痛みを感じない程度に)

さすって少しずつ癒着した部分を剥がしていくようにです。

決して「揉む」のではなく、オイルなどをつけて「さする」ようにしてください。

(※ 方法がよくわからない場合などはお問合せください)

 

瘢痕化が強く、深い組織にまで及んでいる場合には、癒着剥離を目的として処置が必要な場合があります。

当院では、出来るだけ早期に回復をしていただけるように下のような処置器具を用います。

 

【参考】
水痘帯状疱疹ウイルス疾患の病理(NID 国立感染症研究所感染病理部)

 


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