「頚性神経筋症候群」とはどんな病気ですか?


 

「首こり病」、「頚性神経筋症候群」は、”首こり博士”の松井孝嘉先生が発見、提唱し治療をされている病気です。

首の筋肉のコリが原因となり、首の痛み、頭痛、めまい、吐き気、だるさ、動悸、目の疲れ、やる気が出ないなど多岐にわたる症状がみられるようになる疾患です。

※上記キーワードで検索するとたくさん情報が見つかると思います。

 

肩こり、首こりがひどくなり、頭痛やめまい、吐き気、なかなか取れない疲労感などが長く続き、不眠や耳鳴り、多汗、ホットフラッシュなどの自律神経失調症状もでてくるようになります。

さらに、このような状態が続いて悪化すると、いわゆる「うつ」の症状も併発するようになり、「頚性うつ」という状態に陥ることがあります。

 

病院で検査をしてもらっても特に異常なところはみつからず、「トシのせい」や「原因不明」と言われてしまい困っている患者さんも多いようです。

 

これら、「首こり病」、「頚性神経筋症候群」、「頚性うつ」の患者さんは、後頭部から首筋、肩甲骨の周囲から背中の筋肉のコリ、硬さがあり、これらの筋群に対して治療する(頚筋治療)と効果があるとの報告が多数あります。

今回の記事では、「首こり病」、「頚性神経筋症候群」、「頚性うつ」とはどんなものか?、どういう治療を行なえば良いのか?を順に解説していきますので、最後までお読みになってください。

 


 

 


「頚性神経筋症候群」とはどんな病気ですか?

頚性神経筋症候群とは、首すじの筋肉の緊張、コリが続くことで血流不良から炎症を起こし、自律神経に関係する数々の不定愁訴(原因不明の頭痛、めまい、倦怠感、易疲労、多汗、不眠、血圧不安定、うつ状態など)がみられるようになったものを言います。

首には自律神経が集まっているところ(自律神経節)があり、コリにより血行が悪くなると神経の栄養状態の不良から機能障害を起こし、上記のような不定愁訴がみられるようになると考えられています。

重症化すると不快症状が精神的ストレスとなりさらに筋肉の緊張強く現れ、なかなか取れないコリ感がさらなる精神的ストレスとなって筋肉の過緊張を惹き起こし…という悪循環に陥ります。(頚性神経筋症候群のうち、うつ傾向がみられるようになったものは「頚性うつ」と呼ばれることもあります。)

 

頚性神経筋症候群でみられる自律神経失調症状の例

我々の身体の神経には3種類あります。筋肉を動かす「運動神経」、冷たい・熱い・痛いなどを感じる「感覚神経」、内臓や血管(一部ホルモンに関わる)を調節する「自律神経」です。

自律神経には2種類あり、身体を動かす時に働く「交感神経」と、身体を休めて回復させる時に働く「副交感神経」があります。

この2つの神経によって各内臓は調節され、正常な状態を維持するためにバランスを取っています。

見ていただくとわかるように、自律神経は全身に分布しており、交感神経と副交感神経のバランスが崩れると症状は全身にみられるようになります。

例えば、動悸、息切れ、頭痛、めまい、吐き気、耳鳴り、食欲不振、胃痛、腹痛、下痢、便秘、ほてり、のぼせ、全身倦怠感、易疲労感、不眠など、自律神経が関係する臓器の不調による症状がみられるようになります。

ですから、頚性神経筋症候群の主症状である「首こり」、「肩こり」があり、これらの自律神経失調症状が合併している場合には、頚性神経筋症候群の可能性があると言えます。

そして、このような不快症状は「精神的ストレス」となります。「精神的ストレス」が長期間続けば脳への疲労も蓄積し、慢性的な疲労感、身体のだるさ、倦怠感、集中力の低下、気分が落ち込みやすいなど、うつとよく似た症状が出てくるのも当然です。

 

頚性神経筋症候群の原因

首こり、肩こりの原因の多くは「生活習慣」にあります。首筋の筋肉や頚椎に負担をかけ、頚性神経筋症候群を悪化させてしまうものには以下のようなものがあります。

 

高い枕、横向きで寝る

日常的に高い枕で寝ていたり横向きで寝ていると首すじの筋肉に負担をかけたり頚椎のズレを引き起こし、首こりや肩こりを悪化させてしまいます。

「高い枕が楽だから」、「横向きじゃないと眠れない」という方がいるのですが、そういう方は頚椎のズレや骨盤の歪みが根本にあるかもしれません。

(※ 詳しくはこちらの記事で解説しております。 → 高い枕や横向きで寝ることの弊害 )

 

うつ伏せで寝る

高い枕、横向きで寝ることよりも首すじの筋肉や頚椎への負担の大きい寝方です。

首こり、肩こりの原因となるだけでなく、頚椎を通る「椎骨動脈」を圧迫することでめまいが出ることもあります。

(※ うつ伏せで寝ることが習慣になっている方は必ずこちらをお読みください。 → え? アナタ、うつ伏せで寝てる人??

 

パソコン、スマホなどの長時間の使用

良い姿勢であっても長時間続けていれば「筋疲労」から首こり、肩こりは起こります。

しかし、パソコンやスマホなどの座位作業では首すじから背中にかけての筋肉への負担が大きく、首こりや肩こりになりやすい姿勢といえます。

しかも同時に目にも負担をかけているので「眼精疲労」から首こり、肩こりを起こしやすくなります。

(※ 目の疲れや眼精疲労の症状が目立つ方はこちらも合わせてお読みください。 → 眼精疲労ってどんなもの? どうしたら良くなる? )

 

猫背、ストレートネック

もともと猫背気味の方やストレートネック気味の方は頭が前に倒れているような状態なので、首すじから背中にかけての筋肉に大きく負担がかかります。

その負担に見合った筋力を持っていれば特に問題は出ないのですが、運動不足、筋力不足であると負担を受けきれず、首こりや肩こりがなかなか治りません;

(※ 猫背、ストレートネック自律神経失調症の原因のひとつです。こちらの記事で解説しております。 → 猫背の人にみられる症状 ~ 自律神経失調症 ~ )

 

その他、様々な不良肢位

上記以外にも頚性神経筋症候群を悪化させる姿勢、習慣はたくさんあります。

ご紹介し切れないのため、こちらの記事でまとめてありますので参考になさってください。 → 基本に戻って「姿勢」のことを考える ~悪い姿勢を続けているとどうなるのか?~ )

 

頚性神経筋症候群の治療法の例

頚性神経筋症候群の治療としては、異常がみられる筋肉の緊張やコリをほぐすことで改善がみられることから、筋肉をやわらかくする薬や注射を使う、電気治療、鍼治療、マッサージなどが選択されることが多いようです。

姿勢や骨格の個人差、心理状態によって緊張やコリの場所が違うのですが、下記の筋群に異常がみられることが多く、治療へのポイントとしてよく活用されています。

「気分が落ち込む」、「何をしても楽しめない」などの気分障害症状がみられるようになった「頚性うつ」であれば、カウンセリングなどの心理療法を合わせて行なうこともあります。

 

【頚性神経筋症候群の治療を行う筋群の例】

特に「頭半棘筋」、「頚棘筋」などは、頚椎、胸椎の横にある「自律神経節」に影響を与え、自律神経失調症の症状をあらわすことが多く、治療ポイントとしては重視されています。(鍼治療、トリガーポイントへの生理食塩水注射など)

重症例では、頭と首の境目の深い所にある「後頭下筋群」にトリガーポイント化が起こっていることが多く、難治性であることが多いです。

 

※1:トリガーポイントとは?

筋肉が変性、癒着、線維化を起こすことで、局所以外にも放散痛や関連痛を出すようになったものです。圧迫を加えると他の部位に痛みを出すことから「引き金点=トリガーポイント」と呼ばれています。首すじの筋肉にトリガーポイントが形成されると、凝りの症状だけでなく頭痛、頭重、吐き気、めまいなどの自律神経失調症状がみられることがあります。筋肉であればどこにでも形成される可能性があり、腰や骨盤まわりの筋肉にトリガーポイントが形成されると腰痛や足の痺れが出てくることがあります。

 

【頭痛と後頭下筋群】

頭痛や頭重感などを併発している場合、ほとんどのケースで「後頭下筋群」にコリやトリガーポイントなどの異常が発生しています。

後頭下筋群の間を「後頭神経」が通過するため、この部のコリは神経を圧迫、締めつけを起こし、頭痛や神経痛などの原因となりやすいところです。

特に、後頭下筋群がトリガーポイント化したものは難治性で、頭痛や顔面の症状(アゴの痛み、眼精疲労、鼻づまり、耳鳴りなど)を起こすことがあり、治療ポイントとして有効な場合が多いです。

下図は後頭下筋群です。

 

※ 後頭下筋の間を大後頭神経が通っているため、この筋が硬くなりこってくると神経を締めつけ「緊張性頭痛」の原因となります。

 

(後頭下筋がトリガーポイント化した場合にみられる頭痛)

 

 

【頚椎、頚筋の異常から自律神経失調症を惹き起こす】

自律神経失調症状について理解するには、他の神経障害疾患のことを知っておくとヒントになります。

例えば、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症は、神経が圧迫されて痛みや痺れなどの症状がみられるようになる疾患です。

これは、神経線維は、圧迫や牽引などの物理ストレスに弱いためです。

 

神経には、温覚、冷覚、触覚などを伝える「感覚神経」、筋肉を動かすための命令を伝える「運動神経」があります。

椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症で感覚神経が障害を受けると痛みや痺れが出てきますし、運動神経が障害を受けると、筋力低下や麻痺などを起こすようになります。

「自律神経」は背骨(特に首のつけ根から胸椎)に集まっていてそこから全身に分布し、血管を広げたり、内臓を動かす神経です。ですから、頚性神経筋症候群で自律神経が障害を受けると、血圧に変動が出やすくなったり(高血圧、低血圧)、心臓が早く動いて苦しくなったり(動悸)、血管が極端に開いたり閉じたりしてのぼせがでたり(ホットフラッシュ)など、様々な自律神経失調症状がみられるようになるのです。

自律神経は無意識下で脳からの調節を受けていますので、自律神経失調症状は「精神的ストレスが大きな原因」と言われるのですが、実はそれだけではありません。

首筋や背中にかけての筋肉が硬くなり過ぎると、「自律神経節」に圧迫、牽引などのストレスがかかり、「自律神経失調症状」が起こると考えられます。

 

 


当院では、「首こり病」、「頚性神経筋症候群」、「頚性うつ」の原因をこれらの筋群だけでなく、「頚椎のアライメント不良(配列の乱れ、歪み)から来る頚筋の過緊張」と考えて治療を行っております。

 

 

 

【頚椎の偏位(ズレ)が凝りを惹き起こすメカニズム】

 

【癒着を起こした頚筋の治療と偏位した頚椎治療の例】

「首こり病」、「頚性神経筋症候群」、「頚性うつ」に関与する筋群の癒着、線維化を除去し、頚椎の偏位状態を正常軸に合わせていくことを目的としています。

 

 


【初回無料カウンセリングのご案内】

当院では「初回無料カウンセリング」を行っておりますので、お困りの方はご活用ください。

「初回無料カウンセリング」では、お困りの症状について問診、各種スクリーニングを受けていただいた後、「原因」を見つけ出し、それに応じた治療法、治療の組み立てをご提案させていただきます。

※ 初回カウンセリングの際には、悪化させていると思われる悪習慣を探し、改善するための日常生活指導をさせていただきます。まずはそれを一定期間実践していただき、それでも改善がみられない場合に治療開始するというスタンスで構わないと思います。

(初回カウンセリング時の治療は行っておりませんのでご了承ください)

 

「初回無料カウンセリング」へのお申し込みは、下記のお問合せフォームからお願いいたします。

https://funa-in.com/contact/

 


 

参考: 松井孝嘉; 川口浩. 頚部筋群の緊張が全身の不定愁訴に関与している. 整形外科, 2022, 73.1: 88-91.