股関節の痛み ~リハビリのし過ぎ?~

先日、右の股関節を痛めた患者さんが来られました。

「変形性股関節症」と言われ、筋力強化のためにリハビリも頑張っておられたのですが、

痛みが徐々に強くなり、当院に来院されました。

「股関節強化のためにウォーキング」を勧められ、

「強くするために、痛みのある右側へ荷重するように歩いて下さい。」と指導を受けられたとの事でした。

 

ご本人さん曰く、毎日20~30分は歩くようにしていたらしく、

「リハビリし過ぎたんでしょうか?」と…。

 

さて、どうなんでしょうか?


 

下の図は「バランスの良い状態」です。

上半身の荷重が、骨盤、股関節を経て左右にバランスよく分散されています。

 

このバランスが崩れてしまう原因は色々あるのですが、多くの場合は日常生活の「クセ」にあります。

二本足で立つ、歩く時に「体重をかける足(過荷重側)」「体重をかけない足(非荷重側)」という「クセ」がついてしまうとバランスがどんどん崩れていってしまいます。

 

過荷重側と非荷重側が出来てしまうと骨盤には「傾き」が出てきますので、

これが骨盤の歪みとなり全身に影響が出てきてしまいます。

では、このように「非荷重側」と「過荷重側」では

どちらが痛めやすいのでしょうか?

 

 

答えは「両方」です。

ただし「痛めかた」が違います。

 

どういうことかと言いますと、

「荷重をかけない側(非荷重側)」は、日常的に荷重していないため

筋力や骨格が「弱く」っています。

弱くなっている分、何かのはずみで普段よりも荷重が増えただけで痛めてしまうワケです。

普段、あまり歩かないのに「ちょっと遠出しただけ」とかでも

その負荷に身体が負けてしまって痛めてしまいます。

 

 

逆に「荷重をかける側(過荷重側)」は、日常的に荷重している分、

ある程度、筋力や骨格の「強さ」を持っています。

その「強さ」の許容範囲の中で生活している分には痛みが出ることは少ないのですが、

普段から荷重をかけ続けているためにその負担が「蓄積」してしまいます。

蓄積されたものが、自分の許容範囲を超えた時には痛みが出るということです。

ある程度の強さを持つけれど、負荷の蓄積によって損傷が起こるワケです。

 


話を戻します。

冒頭の患者さんは

「股関節強化のために、痛みのある側へ荷重するように歩いて下さい。」と指導を受け、素直にそれを実践していました。

 

股関節、骨盤、膝関節の状態をみせていただくと、

普段から右側に荷重をかけるクセがあることが分かりました。

(※見分け方には色々あるのですが、その方は痛みのある側の膝が『伸展傾向』でした。膝はピンと伸展した方が荷重しやすいですから、荷重の傾向が分かるワケです。)

 

つまり「荷重させ過ぎて痛めた股関節に、さらに荷重させ過ぎて余計に痛めてしまった」ということです。

単に「リハビリし過ぎ」ということではありません。

 

高齢の方の股関節や膝に痛みが出ると

「筋力をつけなきゃ! リハビリでしっかり筋力をつけましょう!」という指導が入ることが多いのですが、

方向性を間違ってしまうと余計に痛めてしまいます。

 

この方の場合、股関節だけでなく骨盤や膝関節などのバランスを整える処置を行った後、

リハビリとしては、「まず、非荷重側に体重をかけて歩く」ようにしていただき(つまり逆側にはあまり体重をかけないようにする)、

ある程度までバランスが取れてきたら「左右均等に足を運ぶような歩き方に切り替えていく」という段階的な指導が必要となります。


「運動」、「リハビリ」も、

患者さんの状態、ご自身の状態に合わせて行わないと逆効果になることもあるので注意が必要です。

 

 


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