不妊症について知ることから始める一歩

不妊症は、一人で抱え込みがちな悩みかもしれません。けれど、この病気について正しく知り、向き合うことは、未来へとつながる大切な一歩です。この記事では、不妊症の基礎知識から、治療法、日常生活での過ごし方までを、専門的な視点からわかりやすく解説します。不妊に悩むあなたが、少しでも前向きに、そして安心して治療に進めるよう、この記事がお役に立てれば幸いです。

不妊症の原因とメカニズム

不妊症は、妊娠を望む男女が避妊をせずに性交を行っているにもかかわらず、一定期間妊娠に至らない状態を指します。日本産科婦人科学会では、この期間を1年としています。不妊の原因は様々で、男女どちらか一方にある場合も、両方にある場合も、また原因が特定できない場合もあります。

女性側の主な原因

  • 排卵障害: 卵巣から卵子が正常に排出されない状態です。多嚢胞性卵巣症候群などが代表的です。
  • 卵管の問題: 卵子と精子が出会う卵管が、炎症や子宮内膜症などで詰まったり、癒着したりしている状態です。
  • 子宮の問題: 子宮内膜ポリープや子宮筋腫など、卵子が着床する子宮に問題がある場合です。
  • ホルモンバランスの乱れ: ホルモン分泌が正常でないために、排卵や子宮内膜がうまく整わない状態です。

男性側の主な原因

  • 精子の問題: 精子の数が少ない、運動率が低い、形が正常でないなどの状態です。
  • 精子の通り道の問題: 精子の通り道である精管が閉塞している状態です。

その他の要因

不妊の原因は一つに絞れるものではなく、年齢、ストレス、喫煙、飲酒、食生活などの生活習慣も深く関わっています。特に女性の場合、年齢が上がるにつれて妊娠率は自然と低下していきます。

不妊症の症状

不妊症は、それ自体が自覚できる症状を持つわけではありません。そのため、妊娠しない期間が続くことで初めて気づくことがほとんどです。しかし、不妊の原因となっている疾患によっては、以下のような症状が現れることがあります。

  • 月経不順: 生理周期が不安定、出血量が少ない、または多すぎるなど。
  • 月経痛がひどい: 子宮内膜症などが原因で、日常生活に支障をきたすほどの強い痛みがある。
  • 性交時の痛み: 性交時に強い痛みを感じる場合、子宮や卵巣の病気が隠れている可能性があります。

これらの症状に気づいたら、不妊治療を検討する以前に、まず婦人科を受診して原因を特定することが重要です。

不妊症の診断方法

不妊治療を専門とするクリニックや病院では、まず問診から始まります。これまでの妊娠歴や月経の状況、既往歴などが聞かれます。その後、以下のような検査が行われます。

女性の検査

  • 基礎体温の測定: 排卵の有無やホルモンバランスを把握します。
  • 経膣超音波検査: 子宮や卵巣の状態を観察します。子宮筋腫や子宮内膜症の有無を確認できます。
  • 血液検査: ホルモン値や甲状腺ホルモン、風疹の抗体などを調べます。
  • 子宮卵管造影検査: 子宮内腔の形や卵管の通りを確認します。

男性の検査

  • 精液検査: 精子の数や運動率、奇形率などを調べます。不妊治療においては、男性側の原因も約半数を占めるため、男性も検査を受けることが推奨されます。

これらの検査結果を総合的に判断して、不妊の原因を特定し、治療方針が立てられます。

不妊症の治療法

不妊治療は、原因や状況によって様々な方法があります。大きく分けて、一般不妊治療、生殖補助医療(ART)に分類されます。

一般不妊治療

  • タイミング法: 基礎体温や超音波検査で排卵日を予測し、その日に合わせて性交を行う方法です。
  • 薬物療法: ホルモン剤などを用いて、排卵を促したり、ホルモンバランスを整えたりします。
  • 人工授精: 精液を採取し、運動の良い精子を選別して、排卵日に合わせて子宮内に注入する方法です。

生殖補助医療(ART)

  • 体外受精・胚移植: 卵巣から卵子を採取し、体外で精子と受精させて、できた受精卵を子宮内に戻す方法です。
  • 顕微授精: 精子を卵子に直接注入して受精させる方法です。主に男性側の精子の問題や、体外受精で受精しなかった場合に行われます。

治療法は、年齢や不妊の原因、治療歴などを考慮して、医師と一緒に選択します。

日常生活での注意点とセルフケア

治療と並行して、日々の生活を整えることも大切です。

心と体を整えるためのヒント

  • バランスの取れた食事: 栄養バランスの良い食事は、体全体の健康を保ちます。
  • 適度な運動: ウォーキングやヨガなど、無理のない範囲で体を動かすことは、血行を良くし、ストレスの軽減にもつながります。
  • 質の良い睡眠: 十分な睡眠は、ホルモンバランスを整える上で欠かせません。
  • ストレスをためない: 趣味の時間を持つ、リラックスできる方法を見つけるなど、ストレスを上手に発散しましょう。

パートナーとの関わり方

不妊治療は、一人で頑張るものではありません。パートナーと一緒に向き合うことが大切です。互いの気持ちを正直に話し合う時間を持つこと、治療のスケジュールを共有すること、時には治療から離れて二人の時間を楽しむことなどが、関係を良好に保つ上で重要です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 不妊治療はどのくらい費用がかかりますか?

A1. 治療内容や医療機関によって異なりますが、体外受精などは高額になることがあります。国の助成制度や、2022年4月からの保険適用も進んでいますので、詳しくは医療機関や自治体に確認してください。

Q2. 治療はいつまで続けるべきですか?

A2. 治療の期間は人それぞれです。医師とよく相談し、ご自身とパートナーの気持ちを尊重して、納得のいく形で治療を進めていくことが大切です。

Q3. 治療中も仕事は続けられますか?

A3. 治療内容によっては、通院の頻度が増えることがあります。ご自身の体調や、会社の制度(不妊治療休暇など)を考慮し、無理のない範囲で続けることが大切です。

Q4. 鍼灸や整体は不妊治療に効果がありますか?

A4. 鍼灸や整体は、不妊症の根本的な治療法ではありませんが、体質改善を目的として利用されることがあります。

鍼灸では、血流を良くしたり、自律神経を整えたりすることで、ホルモンバランスを調整する効果が期待されます。また、整体では、骨盤や体の歪みを整えることで、内臓機能の働きを良くする目的で用いられることがあります。

これらの治療法が、科学的に不妊症の治療効果を証明しているわけではありませんが、西洋医学の治療と併用することで、心身のストレスを和らげ、体を良い状態に整えるサポートになる可能性があります。専門の鍼灸師や整体師に相談し、ご自身の体質に合った施術を受けることをおすすめします。必ず、西洋医学の治療を主軸に考え、その補助として利用することが重要です。

Q5. 高齢になると妊娠は難しいと聞きましたが、本当ですか?

A5. 女性の卵子は加齢とともに質が低下するため、妊娠率は自然と下がります。しかし、治療法も進化していますので、諦めずに専門医に相談することが大切です。

Q6. 病院選びのポイントはありますか?

A6. 治療方針や実績、医師やスタッフとの相性、通いやすさなどを考慮して選びましょう。セカンドオピニオンを求めることも有効です。

不妊症は、心身ともに負担の大きい病気です。しかし、治療は進歩しており、多くの選択肢があります。一人で悩まず、信頼できる医療機関やパートナーと一緒に、ご自身のペースで一歩ずつ進んでいってください。

 


【当院での治療について】

当院では不妊治療中の方向けに、「初回無料カウンセリング」を行なっております。

カウンセリングの際に、現在の心身の状態、不妊治療の方向性などを確認し、当院で行なえる治療法についてご呈示させていただきます。

詳しくはこちらの記事: 初回無料カウンセリング ~不妊補助治療~ をご覧ください。