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頚性うつ:首・肩のコリと歪みが引き起こす心の不調とその改善策
近年、慢性的な首や肩のコリが、単なる身体的な不調だけでなく、気分の落ち込みや意欲の低下といった精神的な症状、いわゆる「うつ」と関連しているのではないかという考え方が注目されています。本記事では、この「頚性うつ」について、その原因を頚部から肩甲骨まわりの筋群の癒着や線維化、そしてそれらが引き起こす頚椎の歪みによる頚椎側交感神経節へのストレスと捉え、症状を悪化させる日常生活要因と、改善のための具体的な方法を解説します。
【まずは知っておきたい用語解説】
記事を読み進める前に、いくつか重要な用語について解説します。
筋肉の癒着(筋癒着)
筋肉は、筋線維という細い繊維が集まってできています。通常、これらの線維はスムーズに滑り合うことで、筋肉が柔軟に動きます。しかし、長時間の同じ姿勢や過度な負担、炎症などが続くと、これらの筋線維同士や、筋肉と周囲の組織(筋膜など)がくっついてしまい、滑らかな動きが阻害された状態を「筋肉の癒着」と呼びます。これにより、筋肉の柔軟性が失われ、可動域が制限され、痛みやコリの原因となります。
筋肉の線維化(筋線維化)
筋肉の癒着が慢性化すると、損傷した筋線維が修復される過程で、柔軟な筋肉組織の代わりに硬い線維性の組織が増加することがあります。この状態を「筋肉の線維化」と呼びます。線維化した筋肉は、柔軟性や収縮力が低下し、周囲の神経や血管を圧迫する可能性もあります。
交感神経節
自律神経系は、私たちの意思とは無関係に体の機能を調節する神経系で、活動的な状態を促す「交感神経」と、リラックスした状態を促す「副交感神経」の2つに大きく分けられます。交感神経は、脊髄から出て全身に分布していますが、その途中に中継地点となる神経細胞の集団が存在します。これが「交感神経節」です。頚椎の側面には、上頚神経節、中頚神経節、下頚神経節(星状神経節)といった交感神経節があり、顔面、頭部、首、肩、腕などの血管収縮や発汗、心拍数などを調節しています。
頚性うつのメカニズム
本記事では、頚性うつの原因を以下のように考えます。
首・肩まわりの筋肉の癒着と線維化
長時間のデスクワーク、スマートフォンの使いすぎ、運動不足、ストレスなど、様々な要因によって、首や肩甲骨周辺の筋肉に癒着や線維化が生じます。特に、僧帽筋、肩甲挙筋、菱形筋、胸鎖乳突筋、斜角筋群、後頭下筋群などが影響を受けやすいと考えられます。
頚椎の歪み
これらの筋肉の癒着や線維化は、筋肉のバランスを崩し、頚椎の正常な配列を歪ませる原因となります。例えば、僧帽筋や肩甲挙筋の過緊張は、肩甲骨を引き上げ、頚椎のカーブに影響を与える可能性があります。また、後頭下筋群の過緊張は、上位頚椎(C1、C2)の微細な歪みを引き起こすことがあります。
頚椎側交感神経節へのストレス
歪んだ頚椎は、その側面を走行する交感神経幹や交感神経節を物理的に圧迫したり、周囲の硬くなった筋肉によって神経が牽引されたりするストレスを与えます。
自律神経の乱れと精神症状
交感神経節への慢性的なストレスは、自律神経系のバランスを大きく乱します。交感神経が過剰に興奮した状態が続くと、心身が常に緊張状態となり、睡眠の質の低下、疲労感、集中力の低下、イライラ、不安感などを引き起こしやすくなります。これらの症状が進行すると、抑うつ気分や意欲の低下といった、うつ病に類似した精神症状が現れると考えられています。
頚性うつを悪化させる日常生活要因
以下の日常生活における習慣や要因は、首や肩まわりの筋肉の癒着や線維化、頚椎の歪みを悪化させ、頚性うつの症状を悪化させる可能性があります。
長時間の同一姿勢
デスクワーク、スマートフォンの操作、ゲームなど、長時間同じ姿勢を続けることは、特定の筋肉に負担をかけ、癒着や線維化を促進します。特に、前かがみの姿勢や猫背は、首や肩への負担を増大させます。
運動不足
筋肉は、適度な運動によって柔軟性を保ち、血行が促進されます。運動不足は、筋肉の柔軟性を低下させ、癒着や線維化を進行させやすくします。
不適切な睡眠環境
高すぎる枕や低すぎる枕、柔らかすぎるマットレスなどは、睡眠中に頚椎に不自然な負担をかけ、歪みを引き起こす可能性があります。また、うつ伏せ寝は首を大きく捻るため、特に負担が大きいです。
睡眠環境が良くないと十分な睡眠が取れないため、筋疲労が残りこりを悪化させます。
精神的なストレス
ストレスは、全身の筋肉を緊張させる大きな要因です。慢性的なストレスは、首や肩の筋肉を常に緊張させ、癒着や線維化を促進し、頚椎の歪みを悪化させる可能性があります。
冷え
冷えは、筋肉の血行を悪くし、硬直を招きます。特に、首や肩まわりが冷えると、筋肉の柔軟性が低下し、癒着や線維化が進みやすくなります。
食生活の乱れ
栄養バランスの偏った食事や、水分不足は、筋肉の健康を損ない、疲労回復を遅らせる可能性があります。
喫煙
喫煙は、血管を収縮させ、血行を悪化させるため、筋肉や神経への酸素供給を妨げ、状態を悪化させる可能性があります。
頚性うつを改善するための方法
頚性うつを改善するためには、首や肩まわりの筋肉の癒着や線維化を解消し、頚椎の歪みを整え、自律神経のバランスを回復させることが重要です。以下に具体的な改善方法を挙げます。
正しい姿勢の意識
- 座位: デスクワーク時は、モニターを目の高さに、椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばすことを意識しましょう。足裏を地面につけ、膝の角度が90度になるように調整します。
- 立位: 耳、肩、股関節、膝、くるぶしが一直線になるように意識しましょう。
- スマートフォン操作: なるべく顔を上げて、画面を見るように心がけましょう。長時間使用する場合は、適度に休憩を取りましょう。
適度な運動とストレッチ
- ウォーキングや軽いジョギング: 全身の血行を促進し、筋肉の柔軟性を高めます。
- 首や肩のストレッチ: ゆっくりと首を前後左右に倒したり、回したり、肩を回したりするストレッチをこまめに行いましょう。特に、僧帽筋、肩甲挙筋、胸鎖乳突筋などを意識して伸ばすと効果的です。
- 肩甲骨を意識した運動: 肩甲骨を寄せたり、上下に動かしたりする運動は、肩まわりの筋肉の癒着を解消し、血行を促進します。
睡眠環境の見直し
- 適切な枕の高さ: 横向き寝の場合は、肩から頭にかけて自然なラインになる高さ、仰向け寝の場合は、首のカーブを自然に保てる高さの枕を選びましょう。
- マットレスの硬さ: 適度な硬さのマットレスを選び、睡眠中の体の負担を軽減しましょう。
- 寝る前のスマートフォンやパソコンの使用を控える: 画面から発せられるブルーライトは、睡眠の質を低下させる可能性があります。
ストレス管理
- リラックスできる時間を作る: 趣味に没頭したり、音楽を聴いたり、入浴したりするなど、自分なりのリラックス方法を見つけ、実践しましょう。
- 適度な休息と睡眠: 質の高い睡眠を確保することは、心身の回復に不可欠です。
- 必要であれば専門家のサポートを求める: 精神的なストレスが強い場合は、カウンセラーや医師に相談することも検討しましょう。
体を温める
- 入浴: シャワーだけでなく、湯船にゆっくり浸かることで、全身の血行が促進され、筋肉の緊張が和らぎます。
- 温湿布やカイロ: 首や肩の気になる部分を温めることで、血行が促進され、筋肉の柔軟性が高まります。
食生活の改善
- バランスの取れた食事: ビタミンやミネラル、タンパク質などをバランス良く摂取し、筋肉の健康を維持しましょう。
- 十分な水分補給: 水分不足は、筋肉の柔軟性を低下させる原因となります。こまめに水分補給を心がけましょう。
専門家による施術
- 整体やカイロプラクティック: 頚椎の歪みを矯正し、筋肉のバランスを整える効果が期待できます。
- 理学療法: 専門家の指導のもと、適切な運動療法やストレッチを行うことで、症状の改善を目指します。
- マッサージ: 筋肉の緊張を和らげ、血行を促進する効果があります。
最後に
頚性うつは、身体的な不調が精神的な症状を引き起こす可能性があるという点で、従来のうつ病とは異なるアプローチが必要となる場合があります。本記事で紹介した改善方法を参考に、日々の生活習慣を見直し、首や肩まわりの健康を取り戻すことで、心の不調の改善も期待できるでしょう。もし症状が改善しない場合は、自己判断せずに、当院へご相談ください。
(当院からのアドバイス)
強度の癒着、線維化は運動だけでは取れないこともあります。当院では層状圧による癒着の剥離、筋線維配列の正常化を行なう治療から始め、頚椎の歪みの矯正、筋バランスの整えることで自律神経節へのストレス除去を図る治療を行ないます。
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