頚性うつとセロトニン ~身体の不調が心の不調に繋がるメカニズムとその対策~

「うつ病は心の病気」と一般的には考えられていますが、中には身体的な要因、特に首の凝りや不調が深く関わっているケースがあります。それが「頚性うつ」と呼ばれる状態です。精神科や心療内科に通い、抗うつ薬を服用してもなかなか改善しない場合、その原因が首にある可能性を考える必要があります。

この記事では、頚性うつという概念と、その症状がなぜ心の不調に繋がるのか、そして脳内のセロトニンとの関連性を解説します。身体の不調からくる心のサインを見逃さず、根本的な解決を目指すための具体的な方法までご紹介します。この記事を読めば、従来のうつ病治療で効果が見られなかった方が、新たなアプローチを見つけるきっかけになるかもしれません。

頚性うつの定義とセロトニンの役割

頚性うつとは

頚性うつは、首の筋肉の慢性的な凝りや緊張によって引き起こされる自律神経の乱れから、うつ病に似た症状が現れる状態を指します。パソコンやスマートフォンの使いすぎによる前傾姿勢、いわゆる「ストレートネック」や、長時間のデスクワークが主な原因として挙げられます。

首の周りには、脳に繋がる重要な血管や神経、そして自律神経が通っています。首の筋肉が硬くなると、これらの神経や血管が圧迫され、脳への血流が悪くなったり、自律神経のバランスが崩れたりします。これにより、身体に様々な不調が生じ、それが心の不調、つまりうつ症状に繋がっていくと考えられています。

 

セロトニンとは

セロトニンは、脳内で働く神経伝達物質の一つで、精神の安定や幸福感に深く関わっていることから、「幸せホルモン」とも呼ばれています。ノルアドレナリンやドーパミンといった他の神経伝達物質の働きを制御し、心のバランスを保つ重要な役割を担っています。セロトニンが不足すると、不安感やイライラ、意欲の低下、気分の落ち込みなどが現れやすくなります。一般的なうつ病では、このセロトニンの働きが低下していることが一因と考えられています。

 

頚性うつとセロトニンの関連性

頚性うつの場合、首の凝りや痛みといった身体的なストレスが、直接的に脳に影響を及ぼし、セロトニンの分泌や働きを低下させると考えられています。脳は首の痛みという刺激を大きなストレスとして捉え、過剰な防御反応を起こします。その結果、セロトニンをはじめとする神経伝達物質の量や働きが低下し、精神的な不調を招きやすくなるのです。このため、心のケアだけでなく、根本原因である首の不調を改善することが、セロトニンを増やし、精神症状を改善するために非常に重要となります。

 

頚性うつの症状とリスク

頚性うつは、通常のうつ病と似た症状を示す一方で、身体的な不調が先行して現れることが多いのが特徴です。

 

精神的な症状

  • 気分が落ち込む
  • やる気が出ない
  • 集中力の低下
  • 不安感やイライラ
  • 睡眠障害(寝つきが悪い、途中で目が覚めるなど)
  • 根気が続かず、仕事に影響が出る

 

身体的な症状

  • 慢性の頭痛や頭重感
  • 首や肩の激しい凝り、痛み
  • めまいやふらつき
  • 吐き気
  • 倦怠感や疲労感
  • 目が疲れる、目の奥が痛い
  • 動悸や手足の冷え、しびれ

これらの症状は、自律神経のバランスが崩れることで生じ、心と体の両方に影響を及ぼします。精神的な症状が強い場合でも、その背景に首の不調が隠れている可能性があるため、安易に精神的な問題と決めつけず、全身の状態をチェックすることが大切です。特に、従来のうつ病治療で効果が見られない場合は、頚性うつを疑うべきサインかもしれません。

改善・予防方法とセロトニンを増やす具体的なアクションプラン

頚性うつを改善するためには、首の不調とセロトニンの両方にアプローチすることが重要です。

 

首の不調を改善する

  1. 正しい姿勢を意識する
  • パソコンやスマートフォンの画面を目の高さに合わせ、首が前傾しないように調整しましょう。
  • 長時間同じ姿勢を続けないよう、1時間に1回は立ち上がって体を動かすことを心がけてください。
  1. 首や肩の筋肉をほぐす
  • 蒸しタオルなどで首周りを温め、血行を促進しましょう。
  • 首をゆっくり回す、肩甲骨を動かすなど、簡単なストレッチを日々の習慣に取り入れてください。ただし、痛みがある場合は無理をせず、専門家へ相談しましょう。
  1. 専門家への相談
  • 整骨院や鍼灸院、専門のクリニックなど、首の凝りや姿勢の改善を専門とする機関に相談することも有効です。

 

セロトニンを増やす具体的なアクションプラン

セロトニンは、生活習慣を少し見直すだけで、分泌を促すことができます。

  1. 日光を浴びる
  • セロトニンは、日光を浴びることで合成が促進されます。
  • 朝起きたらカーテンを開けて日差しを浴びる、通勤時に一駅歩くなど、一日15分から30分程度の日光浴を心がけましょう。
  1. リズム運動を取り入れる
  • 一定のリズムで体を動かす「リズム運動」は、セロトニン神経を活性化させます。
  • ウォーキング、ジョギング、サイクリングなどの有酸素運動を、無理のない範囲で継続することが大切です。ガムを噛むことでもセロトニン神経が刺激されるため、簡単にできる方法としておすすめです。
  1. 食事を見直す
  • セロトニンの原料となる必須アミノ酸「トリプトファン」を積極的に摂取しましょう。
  • トリプトファンは、大豆製品(豆腐、納豆)、乳製品(牛乳、チーズ)、ナッツ類、赤身肉、魚(マグロ、カツオ)などに多く含まれています。
  • また、トリプトファンからセロトニンを合成するためには、ビタミンB6や炭水化物も必要です。これらの栄養素をバランス良く摂ることが重要です。

まとめ 

頚性うつは、首の不調という身体的な問題が、心の不調に繋がるという現代社会に特有の症状です。精神的な治療だけでは改善が見られない場合、その根本には首の凝りや自律神経の乱れが隠されている可能性があります。

この症状を改善するためには、首の凝りを解消するアプローチと、セロトニンを増やすための生活習慣の改善を組み合わせることが重要です。正しい姿勢を意識し、適度な運動やバランスの取れた食事を心がけることで、首の負担を減らし、セロトニンを活性化させることができます。自分の体と心に真剣に向き合い、根本から健康を取り戻すための第一歩を踏み出しましょう。