肉離れに関する包括ガイド ~すじが切れてる~

この記事は、肉離れについて「どうして起こるの?」「どう対処すればいいの?」といった疑問を抱えている一般の方、特にスポーツや運動をする方を主な読者としています。

このガイドでは、肉離れの基本的な知識から、症状、応急処置、適切な治療法、そして再発を防ぐための予防策までを、専門的な内容を分かりやすくお伝えします。肉離れについて正しく理解し、万が一の時に適切な行動がとれるように参考になさってください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の症状に関する診断や治療を保証するものではありません。ご自身の症状に不安がある場合は、必ず専門の医療機関にご相談ください。

肉離れとは

肉離れとは、筋肉が急激な収縮や引き伸ばしに耐えきれず、筋肉の線維やそれを包む筋膜が損傷、あるいは部分的に断裂してしまうケガです。正式には「筋挫傷」と呼ばれます。

「プチッ」という断裂音を伴うことがあり、激しい痛みが特徴です。主に太ももの裏側(ハムストリングス)やふくらはぎで起こりやすいですが、大腿四頭筋(太ももの前)やふくらはぎ、腕の筋肉にも起こることがあります。

損傷の程度は、軽度から重度までさまざまです。

  • 軽度 筋肉の線維が少し傷ついた状態。痛みは軽いですが、動作で痛みが強くなります。
  • 中等度 筋肉の線維が部分的に切れた状態。強い痛みがあり、患部がへこむことがあります。歩行が難しくなる場合もあります。
  • 重度 筋肉の線維が完全に断裂した状態。激しい痛みがあり、自力で立つことや歩くことが非常に困難になります。

原因とメカニズム

肉離れは、筋肉に過度な負担がかかることで発生します。主な原因は以下の通りです。

  • 筋肉疲労の蓄積 練習のしすぎや疲労がたまっている状態では、筋肉が硬くなり、伸び縮みする力が低下しています。
  • ウォーミングアップ不足 十分なウォーミングアップをせずに急な動きをすると、筋肉が硬いまま大きな力が加わり、損傷しやすくなります。
  • 柔軟性の低下 普段からストレッチをしないなど、筋肉が硬い状態だと、急な動きに対応できません。

特に、筋肉が引き伸ばされながら力を入れる動作(遠心性収縮)で起こりやすく、短距離走でのスタート時やジャンプの着地時などに発生することが多いです。

症状

肉離れをすると、主に以下のような症状が現れます。

  • 痛み 発生した瞬間に「ブチッ」という音や感覚とともに、筋肉に激しい痛みが走ります。
  • 腫れと内出血 患部の筋肉が腫れ、数日後には内出血によって皮膚が青紫色に変色することがあります。
  • 患部のへこみ 損傷がひどい場合、筋肉が切れた部分にへこみが感じられることがあります。
  • 運動機能の低下 筋肉を伸ばしたり、力を入れたりすることが困難になります。重症の場合は、歩くこともできなくなります。

 

すぐに病院へ行くべき症状

以下の症状が見られる場合は、重度の肉離れや他のケガの可能性もあるため、早急に整形外科を受診してください。

  • 激しい痛みで全く動けない
  • 患部が大きくへこんでいる
  • 歩くことも立つこともできない(完全断裂の可能性あり)

診断方法

医療機関での診断は、問診と触診、そして画像検査によって行われます。

  • 問診と触診 医師がケガをした状況や痛みの状態を詳しく聞き、患部を触って損傷の程度を確認します。
  • 画像検査 超音波検査やMRI検査を行い、筋肉の損傷部位や範囲、内出血の有無などを正確に診断します。骨折の疑いがある場合は、レントゲン検査を行うこともあります。

治療法と応急処置

 

肉離れは適切な処置を怠ると、再発しやすくなったり、後遺症が残ったりすることがあります。

受傷直後の応急処置(RICE処置)

ケガをした直後には、応急処置として「RICE(ライス)処置」を行います。

  • Rest(安静) 運動をすぐに中止し、患部を動かさないようにします。
  • Icing(冷却) 氷嚢などで患部を冷やし、炎症と内出血を抑えます。冷やしすぎによる凍傷に注意しましょう。
  • Compression(圧迫) テーピングや弾性包帯で患部を適度に圧迫し、腫れの広がりを防ぎます。
  • Elevation(挙上) 患部を心臓より高い位置に上げ、内出血を最小限に抑えます。

 

医療機関での治療

  • 固定 損傷の程度に応じて、サポーターやテーピングなどで患部を固定し、安静を保ちます。
  • リハビリテーション 炎症が治まったら、医師や理学療法士の指導のもとでリハビリを始めます。ストレッチや筋力トレーニングを段階的に行い、筋肉の柔軟性と機能を回復させます。
  • 薬物療法 痛みや炎症を抑えるために、湿布や内服薬が処方されることがあります。

予防法

肉離れを一度起こすと、再発しやすいと言われています。日頃から以下の点を心がけて、予防に努めましょう。

  • 運動前のウォーミングアップ 軽いジョギングや動的ストレッチで、筋肉を温めて柔軟性を高めましょう。
  • 運動後のクールダウン 疲労がたまった筋肉をそのままにせず、入念なストレッチでケアします。
  • 十分な水分補給 水分不足は筋肉のパフォーマンスを低下させ、肉離れのリスクを高めます。
  • 適切な筋力トレーニング 筋肉をバランス良く鍛えることで、特定の部位に負担が集中するのを防ぎます。

よくある質問(FAQ)

 

Q1 肉離れと筋疲労の違いは何ですか?

A1 筋疲労は筋肉の使いすぎによるもので、通常は安静にすれば改善します。肉離れは筋肉組織の損傷であり、激しい痛みを伴い、適切な治療が必要です。

 

Q2 軽症なら病院に行かなくても大丈夫ですか?

 

A2 軽症でも放置すると筋肉が硬いままになり、再発を繰り返すことがあります。自己判断せず、一度医療機関を受診して正確な診断を受けることが重要です。

 

Q3 治るまでにどのくらいの期間がかかりますか?

 

A3 損傷の程度によりますが、軽度で数週間、重度では数カ月かかることもあります。医師の指示に従い、焦らずにリハビリを進めることが大切です。

 

Q4 湿布は冷たいものと温かいもの、どちらがいいですか?

 

A4 負傷直後の急性期は、炎症を抑えるために冷たい湿布やアイシングが基本です。炎症が治まった回復期には、血行を良くするために温める治療が効果的です。