様々な要因が複合した呼吸障害、発声障害 ~甲状腺腫オペ後の反回神経麻痺

ご報告するのは「甲状腺腫オペ後に反回神経(発声に関わる神経)が麻痺し、発声障害と呼吸障害がみられるようになった患者さん」の症例です。

この症例への対応で

  • 発声障害
  • 呼吸障害
  • いびき
  • 睡眠時無呼吸

 

などへの応用が可能であると考えられます。

これらの共通点は「気道が狭くなる」ということです。

気道が狭くなる要因には様々なものがありますが、この方には「頚椎のアライメント(配列)不良」がみられ、それが気道を狭くしている要因のひとつとして考え治療を組み立てました。

 


発声障害と呼吸障害

呼吸や発声のメカニズムはちょっと複雑です。

呼吸には「横隔膜」や「肋間筋」などの筋肉、
「肋骨」、「肋椎関節」、「胸郭」などの骨格的要素が関わりますし、
発声に関わる神経には、迷走神経の枝である「反回神経」があります。

下の写真は、甲状腺腫のオペの際、反回神経(発声に関わる筋群を動かす)が傷ついてしまい、
喉頭筋の動きが悪くなってしまった患者さんの声帯の写真です。

空気が通る気道のところが斜めになって(片方の筋肉の収縮がしづらいため)、開きが悪くなっているのが分かると思います。

「息苦しさ」も訴えておられ、寝るのもしんどいとのこと。
確かに声がかすれたり、発声困難などの症状がみられました。

反回神経が傷ついて、若干の麻痺があるので、発声のための筋群が機能しにくくなるのは仕方がないと言われたそうです。

反回神経の麻痺があるので、支配されている発声のための筋群が機能しにくくなるのは仕方ないとしても、「全てが反回神経麻痺のせいではない」と診たてました。

胸郭の状態をみると、やはり拡がった状態。

呼吸の際に胸郭は、
「息を吸うと広がる」
「息を吐くときに狭まる」
という動きをします。

もしも胸郭が拡がり過ぎていれば、
「吐きにくい」ということになります。

そして頸椎のアライメントが崩れれば、
空気の通り道である「気道」のカーブも崩れてしまい、
呼吸がしづらくなってしまいます。

ですので、まず
胸郭の動きをスムーズに行えるように肋椎関節の調子を整えます。
その後、胸郭の形に沿って頸椎のアライメントを整えます。
(※ 当院では上記だけでなく、「頸椎のアライメント(配列)」なども関係していると考えて治療の組み立ての中に入れるようにしています。)

呼吸運動には胸郭を動かす筋群の働きを鍛えなければなりませんので、
「腹式呼吸」の指導が必要となります。

呼吸は「意識的呼吸」と「無意識呼吸」がありますので、
(通常の呼吸は無意識)
呼吸運動が楽に行えるようになるまでには、少しトレーニングが必要になります。

この患者さんは気道を空気がスムーズに通過しなかったため、
「いびき」もあったようですが、頸椎のアライメント調整により気道カーブも整ったためか、
以下のような変化がみられています。

トレーニングを続けた結果、通常呼吸もスムーズになり、
発声も改善してカラオケなどにも行けるようになったとのことです。