なぜ肩がこり過ぎると頭が痛くなるのですか? ~なかなか治らない緊張性頭痛~

緊張性頭痛は、別名「肩こり頭痛」とも呼ばれ、首筋や後頭部、肩甲骨の内側にある筋肉がこり過ぎて起こります。

硬くなっている筋肉をやわらかくすることで症状の緩和がみられることから、ストレッチ体操、水泳などの運動が推奨されます。
その他、ストレスによって筋肉は緊張して硬くなってしまいますので、各種リラクセーション法を取り入れることも効果的であるとされています。

※ こちらの記事で「緊張性頭痛」、「肩こり頭痛」の簡単な対処法、予防法を紹介しています。

まだお読みでない方は、まずこちらから。 → なぜ肩がこり過ぎると頭痛が起きるのですか? ~緊張性頭痛~

 

しかしながら、運動やリラクセーションでもなかなか改善されない緊張性頭痛があるのも確かです。

それらの中には、自力では筋肉がやわらかくならないくらいに筋肉の「線維化」や「癒着」が進んでいるものや、筋肉の「トリガーポイント化」が進んでいるものがあるからです。

以下、順を追って解説していきますね。

 

基本の筋肉の解剖

筋肉は「筋線維」で出来ています。「筋線維」は長い糸みたいなものですが、それ自体に収縮性があります。

それが束のように何本も集まり、袋状の「筋膜」によって包まれている状態です。

一本一本の筋線維が収縮することによって、筋肉全体が収縮し関節を動かします。

筋膜はコラーゲンと水分で出来ていて、筋肉が収縮する時に発生する摩擦を少なくする働きを持ちます。

筋膜の水分が潤滑油として働いて滑りを良くし、スムーズに筋肉が収縮できるようにしているワケです。

 

筋肉の癒着、線維化

しかし、ケガや日常生活動作などによって筋膜や筋線維は傷つき、その後にきちんと修復されないとその筋膜の水分は少なくなり、硬く、もろくなって、潤滑油としての働きが低下してしまいます。(粘性が高くなるため)

その他、運動不足などで筋肉を動かしていないと、筋膜と筋線維の間、筋線維同士の間に老廃物がたまり、それがこびりついたようになって、癒着を起こしてしまいます。

 

そのような状態が続くとスムースな収縮が出来なくなって硬くなり(それが「肩こり」の状態)、筋膜と筋線維、筋線維同士がくっついて「癒着」してしまいどんどん筋肉の働きが低下してしまいます。

(筋膜と筋線維、筋線維同士が「癒着」してしまうと、「滑走不全」という状態に陥ります。筋肉が収縮する際に筋線維同士が「滑走」するのですが、癒着があるとうまく「滑走」出来ないため動きが悪くなります。)

 

「癒着」してしまった筋肉は、軽い運動をする、リラックスする、休息を取る、くらいでは軟らかくなりません…。

(効果が無いわけではありませんが…。)

 

筋肉をモデル化すると以下のような感じです。

【筋肉のモデル図】


【癒着を起こした筋肉のモデル図】

筋肉の線維と線維の間に老廃物や脂肪がたまり、こびりついたようになって癒着を起こす


 

軽度の癒着であれば筋肉を動かせば癒着は取れるのですが、癒着の範囲が広くなっていたり長年にわたって癒着が続くと「筋肉の線維化」を起こしてしまうことがあります。

(肩こりや腰痛などがみられるところを触ると「ゴリゴリ」した筋肉がありますよね。そういうのは、ほぼ「線維化」していると思って良いです。筋線維同士が癒着して貼りつき合ったような状態です。)

「線維化」した筋肉は元の正常組織ではなくなっている状態(器質的変性という)なので、再生されない限り元の組織には戻ることができません。(これがなかなか治らない理由です)

 

ちなみにですが、強めのマッサージなどを受けて「もみかえし」とか「もみ起こし」とかが起こることがあります。それは、もむことでその癒着を「乱暴に剥がしてしまった」ことによって炎症を起こしたことが原因の一つと考えられます。

 

筋肉の「トリガーポイント化」

前述のように、筋肉がこり過ぎて「癒着」、「線維化」した状態が進むと、筋肉が「トリガーポイント化」することがあります。

 

「トリガーポイント」とは、筋肉などの組織が癒着、線維化が長期化することで出来た硬結部位です。

押圧刺激を加えると、痛さ(痛気持良さ)を過敏に感じたり、他の部位に放散痛、関連痛を感じることから「引き金点:トリガーポイント」と名付けられています。

「トリガーポイント」が、どの筋肉内に出来ているのか?によって、どのような症状が出るかは臨床的に整理されています。

 

以下、緊張性頭痛を発生する筋肉、トリガーポイントの例です。

 

 

 


 

筋肉の癒着、線維化、トリガーポイント化も、筋組織が硬くなり過ぎたことによって起こります。

前述のようにこれらは正常な筋組織ではなくなっている状態(含水比率の低下がみられ、器質的変性を起こしている)です。

これらが正常な筋組織に再生されれば良いのですが、筋肉が硬くなって局所血流が低下していると筋肉細胞を再生するのに必要な材料(新鮮な血液、栄養素、酸素など)が局所にじゅうぶんに運ばれてこなくなります。

そうなると、必要な材料がそろっていない状態で筋肉細胞を再生するわけですから、元の正常な細胞ではなく、さらに硬い、もろい細胞が作られることになります。(細胞再生の悪循環)

しかも、筋肉の線維の配列が乱れ、線維が上手く滑走できないため傷つきやすくなっているため、「寝違え」などを起こすこともあります。

 

癒着、線維化を解き、変性した筋肉の再生を促す

当院では、上述のような筋肉の変性を取り戻すために、頚椎を含めたアプローチを行っております。

癒着した筋線維に対して、癒着した部分を剥がすように層状圧を加えていきます。

 

同時に筋線維の配列、頚椎の配列を整え、正常細胞に生まれ変わりやすい内部環境を取り戻すようにしています。

 


 

(参照:日本頭痛学会「国際頭痛分類第3版(ICHD-3)日本語版」