「顎関節症」の応急処置 ~顎関節に急に痛みが出た場合の処置~

こちらでは「顎関節症の急性期(炎症がみられる時期)」、または「急に顎関節に痛みが出た」という方への内容になっています。

急に顎に痛みが出た

口を開けると痛い(または閉じると痛い)

物を噛む時に痛い

顎を動かさなくても痛い

顎の周りに違和感がある

…など、「急に」、「何かのはずみで」 痛みが出てきた場合に、どうすれば良いのか?を解説しています。

あくまで応急処置ですのでこれらの処置で済ますのではなく、出来るだけ早めに「顎関節症」に対応可能な医療機関に受診してください。

 

急に痛みが出た場合は「ケガ」と同じ!

顎関節症は、顎関節を構成している下顎骨(顎の骨)がずれ過ぎることで始まります。

「あくびをした」、「硬いものを噛んだ」などきっかけがはっきりしている場合もあれば、自分では気づかない「何か」がきっかけになって顎関節がずれて起こるんですね。

つまり、「捻挫」「亜脱臼(関節が外れかけている、または外れてから元の位置に戻った)」の状態と同じと考えられます。(靭帯や軟骨、関節包などを傷めているので「ケガをしたのと同じ」ということです)

 

 

(顎関節脱臼の図)

何かをしたという自覚があってもなくても急に痛みが出た場合、顎の関節の靭帯、軟骨、関節包、関節円板(関節の間に挟まっている軟骨組織)や周囲の筋肉を傷めている可能性が高いんですね。

傷ついているので動かせばキズ口が開くので痛みが出ますし、傷ついた組織は炎症を起こすため腫れて膨らんできます。関節包内で炎症が起こると内圧が高くなるためズキズキとした痛みを感じるようになりますし、関節円板にまで炎症が起こると、噛む時に内部圧力が高くなるため痛みが出ます。

外からは見えませんが「ケガと同じ」です。

 

応急処置は「RICE処置」が原則

スポーツなどをしていて関節や筋肉を傷めた場合の応急処置の原則に「RICE処置」があります。

RICE処置とは、『 Rest(安静)・Icing(冷却)・ Compression(圧迫)・Elevation(挙上)』の4つの処置のことです。(詳細は検索してください。)

顎関節の場合、C(圧迫)とE(挙上)は省いても良いでしょう。

 

何度も言いますが、顎関節症の急性期はケガと同じですから、これに準じて処置をするべきなんですね。

以下、ポイントをまとめておきます。


1.出来るだけ動かさない(出来れば「安静」)

上記のように、顎関節症の急性期は「ケガをしたのと同じ」です。関節の靭帯か、軟骨か、関節包(関節を包んでいる袋)か、関節円板( 膝の関節で言えば「半月板」と同じ)か、周りの筋肉か、にキズがついた状態です。

突き指や足首の捻挫した時であればテーピングやギプスで固定しますが、 顎関節は固定することが難しいので、とりあえずは「動かさない」ようにしてください。

動かしてしまうとキズがふさがりにくいですし、キズを広げてしまうかもしれません。

食事は出来るだけ「口を開けないで済むもの」を選びましょう。

※ 顎関節症の中には、関節が外れかけた「亜脱臼タイプ」のものや、関節円板がズレるタイプのものがあり、ごくまれに「自分で開けたり閉めたりしていると『カクン』とした感触と同時に治った。」という方もいるのですが、ご自身でそのようなタイプかどうかは判断できないと思いますので、動かさない方が無難です。下手に動かすと損傷を拡げる可能性の方が高いです。

 


2.しっかりと冷やす(アイシング)

キズついた組織は、受傷してから「72時間」は炎症反応が出ると考えられています。ですから「最低でも3日」はしっかりと冷やすようにしてください。

アイシングは、必ず「氷」で行なってください。(氷をビニール袋、氷嚢などに入れ、少し水も入れておく)

保冷剤、アイスノンなどを使うと「凍傷」を起こす恐れがあります。(タオルなどを巻いても同じです)(冷湿布や「ひえピ〇」などは、ヒンヤリとした感触はありますが、温度は下がりません!)

 

冷やす時間は「72時間」です。(理論的にはです。実際にはもっとかかることが多いです。)

ですが、現実的には「72時間」冷やし続けるのは不可能と思いますので、「可能な限り」行なってください。

そして、「3日間は痛みが出る」と思っておいてください。キズの大きさや場所によっては、「3日はかからない」かもしれませんが、この期間に安静に出来なかったり、炎症を抑えることが出来ないと、治るのが遅れてしまいます。

ですから、応急処置をした後は、出来るだけ早めに医療機関を受診するようにしてください。

 


以上、あくまで「応急処置」です。

痛みがすぐに、完全に無くなることは残念ながらありません…。

魔法のように「一瞬にキズがふさがる」ということはありませんので。

慢性化させないうちに、出来るだけ早めに「顎関節症に対応可能」な医療機関を受診してください。