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「ただの肩こり」ではなかった ~内臓疾患と肩こりの意外な関係~
2025.08.28
マッサージに通っても、ストレッチをしても、なかなか改善しない慢性的な肩こり。その不調は、もしかしたら単なる筋肉の疲労ではないかもしれません。実は、肩こりは内臓の不調や病気が発する「SOS信号」である可能性が、近年の研究で示唆されています。
近年、心と体のつながりを包括的に捉える「統合的医療」の概念が広まる中で、肩こりと内臓疾患の密接な関係が改めて注目されています。この記事では、なぜ内臓の不調が肩こりとして現れるのか、その科学的メカニズムを解説し、危険な肩こりを見分けるためのチェックリストを紹介します。慢性的な肩こりの裏に隠された、意外な真実を探り、ご自身の健康を見つめ直すきっかけにしてください。
内臓のSOSが肩こりとして現れるメカニズム
なぜ、内臓に問題があるのに肩に痛みを感じるのでしょうか? これは、「関連痛」と呼ばれる現象であり、その背景には「内臓体壁反射」という生体反応が関係しています。
内臓体壁反射とは何か?
私たちの体には、内臓から皮膚や筋肉へと痛みを伝える神経経路が複数存在します。内臓に異常(炎症や虚血など)が起きると、その情報は神経を伝って脳に届きます。しかし、脳は内臓からの信号を正確に特定することが難しいため、内臓と神経が関連している体表面の部位(皮膚や筋肉)に、痛みを投影してしまうことがあります。この現象が内臓体壁反射です。その結果、肝臓や胆のうの不調が右肩の痛みに、心臓の不調が左肩や腕のしびれに感じられるといったことが起こります。
肩こりとして現れやすい内臓疾患の例
特定の部位の肩こりは、以下のような内臓疾患のサインである可能性があります。
- 右肩の痛み: 肝臓や胆のうの病気(胆石症、肝炎など)が考えられます。これらの臓器は、右肩や肩甲骨の下部と神経でつながっています。
- 左肩の痛み: 心臓の病気(狭心症、心筋梗塞など)や、膵臓の病気(膵炎など)が考えられます。特に、心筋梗塞の場合、左肩や腕に激しい痛みやしびれを伴うことが知られています。
- 両肩や背中の痛み: 消化器系の病気(胃潰瘍、十二指腸潰瘍など)や、腎臓の病気(尿路結石など)が原因となることがあります。
ただし、これらの関連痛はあくまで可能性であり、自己判断は危険です。
痛みを感じる部位と内臓の対応関係
医学研究では、特定の部位の痛みが特定の臓器の不調と関連していることが示唆されています。例えば、胆のう疾患では右肩や右の肩甲骨の下部、心臓疾患では左胸や左腕、左肩などです。これらの関連痛は、通常の肩こりと異なり、マッサージをしても痛みが和らがない、あるいは悪化することが多いという特徴があります。
危険な肩こりを見分けるチェックリスト
慢性的な肩こりの中でも、専門医の診察を受けるべきサインがあります。以下のような症状がないか、チェックしてみましょう。
筋肉疲労との違いを判別するポイント
- 痛みの性質: 通常の肩こりは、重だるさや凝りといった感覚ですが、内臓疾患による関連痛は、ズキズキとした鋭い痛みや、しびれを伴うことがあります。
- 痛みの持続性: マッサージやストレッチで一時的に改善しない、あるいは痛みが強まる場合は注意が必要です。また、安静にしていても痛みが続く場合も危険なサインです。
- 痛みの範囲: 特定の狭い範囲だけでなく、肩から背中、腕、胸にかけて広範囲に痛みが広がる場合は、内臓疾患の関連痛である可能性があります。
- 付随する症状: 発熱、吐き気、冷や汗、胸の圧迫感、呼吸困難、体重減少など、肩こりとは直接関係なさそうな症状がある場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
医療機関の受診を検討すべき症状
上記のようなチェックポイントに当てはまる場合は、放置せずに医療機関(内科、整形外科など)を受診することが重要です。特に、胸の痛みや呼吸困難を伴う場合は、緊急性が高いため、迷わず救急車を呼んでください。
専門医による最新の診断アプローチ
昨今の医療現場では、内臓疾患と肩こりの関連を診断するために、問診に加え、血液検査、画像診断(レントゲン、MRIなど)といった多角的なアプローチが行われます。また、痛みの専門医や漢方医など、様々な視点から診断を行うことが推奨されています。
慢性的な肩こりを根本から解決する多角的なアプローチ
内臓疾患による関連痛でない場合でも、慢性的な肩こりの原因は一つではありません。ライフスタイル全体を見直すことが重要です。
ライフスタイルからの改善策
- 正しい姿勢の維持: 長時間のデスクワークやスマートフォンの使用時は、定期的に休憩を取り、正しい姿勢を意識しましょう。
- 適度な運動: 肩甲骨を動かすストレッチやウォーキング、ヨガなどは、血行を促進し、筋肉の柔軟性を高めるのに役立ちます。
- 十分な睡眠と休息: 睡眠中に筋肉や神経は回復します。質の良い睡眠を確保することが、肩こり改善の基本です。
食事と栄養の重要性
偏った食生活は、内臓に負担をかけ、間接的に肩こりを引き起こす可能性があります。バランスの取れた食事を心がけ、特に筋肉の修復に役立つタンパク質や、血行を促進するビタミンEなどを積極的に摂取しましょう。
専門家への相談タイミングと賢い選び方
セルフケアで改善が見られない場合や、痛みが悪化する場合は、専門家への相談を検討しましょう。内臓疾患の可能性がある場合は内科、手足の痺れや麻痺などがある場合は整形外科を受診し、必要な検査を受けてください。
まとめ 肩こりは「体からの警告」
慢性的な肩こりは、単なる筋肉の不調ではなく、内臓や体のバランスが崩れていることのサインかもしれません。痛みや不調を「気のせい」と片付けず、ご自身の体と向き合うきっかけにすることが大切です。
- あなたの肩こりは、いつもと違う性質の痛みではないですか?
- 放置している体調不良はありませんか?
この記事で紹介したチェックポイントを参考に、ご自身の肩こりが本当に「ただの肩こり」なのか、一度立ち止まって考えてみましょう。そして、少しでも気になる症状があれば、当院へご相談ください。
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