ギックリ腰の患者さん ~典型的な腰痛ストーリー~

2024.05.20

ギックリ腰の患者さん(45歳男性)が来られました。

以下、初検時の聴取内容です。

1.昨日の朝、目覚めて起き上がろうとしたら急に痛みが出た。

2.ギックリしたのは、今回で4~5回め。

3.若い頃(30歳前半くらいかな?)に重たいもの持つときにギクッとやっちゃった。初めてギックリしたけど、病院にも行かず2~3日で痛みは無くなった。

4.2回目は30代後半か40歳くらいかな?レントゲン撮ってもらったけど「骨には異状なし」と言われた。痛み止めと湿布で治った。

5.3回目は42歳くらい。レントゲン撮ってもらったら「ヘルニアの可能性がある」と言われた。痛み止めと湿布を出されて「痛みがおさまらなければまた来てください。」と言われ、おさまったので行かなかった。

6.4回目は半年前くらい。動けたし、仕事にも行けたので病院には行ってない。市販の骨盤ベルトをしているとマシ。

7.前回のギックリから半年しか経ってないのに痛みが出た。少し前から右足に痺れが出てたし、さすがにきちんと治さないといけないかなと思って来ました。

8.クセになってますかね?

 

この方のような「腰痛のストーリー」はとても多いです。
このストーリーから色々なことが推察できます。

4.の時点でレントゲンを撮って「骨には異常なし」と言われています。これは「正常です」と言われているわけでなく、あくまで「骨には異常が見つからない」ということ。つまり、「骨以外(筋肉、靭帯など)に何か起こってます」という意味です。
おそらく、3の時点、4の時点では筋肉を傷めて炎症が起こった「筋・筋膜性」のものだと考えられます。

(様々な腰痛の分類はこちらをお読みいだけると分かると思います

→ 「腰痛」の分類 ~腰痛の原因にはどんなものがありますか?~

筋肉は傷めても再生能力が高いので(若いうちは)、特別に何か治療をしなくても安静にしておけば治りは早いです。

5.の時点では「ヘルニアの可能性がある」と言われています。レントゲンでヘルニアは映らないため(レントゲンで映るのは基本的には骨です)、腰椎の並び方や腰椎と腰椎の隙間の大きさをみて「ヘルニアの可能性あり」と判断されたのだと思います。
この時点では、筋・筋膜性のものと、初期のヘルニアが合併していた可能性があります。

そして、ストーリーをみれば分かると思いますが、6~7の期間が「半年」と、これまでよりも期間がだんだん短くなってきています。

当然ですが、これはあまり良い兆候ではありません。しかも今回は、「朝、起き上がろうとしただけ」で痛めてしまってます。
「普段と変わらない動き」で痛めてしまうくらい「弱くなってきていた」ということになります。

筋力が弱くなり、筋肉が硬くなって、傷めやすい状態が続いていた。
それが限界となり、「朝、起き上がろうとしただけ」で傷めてしまった。
筋肉と軟骨、椎間板などが傷ついている可能性が高いです。

これまでのコラムで何度も書いてきましたが、腰痛など運動器系の障害は、筋肉から始まり、関節の障害、骨の障害(変形)への進みます。

(こちらの記事も合わせてお読みください。ご自身の状態が分かると思います。   → 運動器系障害の病期分類 )

 

この方も、当初は筋肉の問題だけだったのに、徐々に関節、椎間板の障害へと進んできていると考えられます。

このまま、何もせずに年を重ねると、「変形性腰椎症」、「脊柱管狭窄症」へと進行するかもしれません。

 

「足の痺れ」はヘルニアの可能性がありますが、はみ出たヘルニアは体内で白血球などに貪食され小さくなる可能性が高いので、一旦は様子見。

筋肉への処置で痛みはある程度軽減しましたので、まだ筋肉の問題の割合が高いと思われますが、腰椎の配列が乱れていること、腰部の可動性が悪くなっていることなどから、椎間関節の問題も合併している可能性があります。

とりあえずは、筋肉や関節、椎間板を損傷したと考えられるので無理せず安静、傷ついたところは炎症を起こすので自宅でのアイシング、キズを広げる可能性があるので過度の運動は禁止、として初回の治療は終えました。

「クセになってますかね?」と聞かれたので、
「クセにしてしまうのは、ご本人さんの生活習慣に問題があるからかもしれませんよ」と言っておきました。

 


【参考】 今日の臨床サポート