動かすと痛い ~筋肉の場合~

「動かすと痛い」という症状はよくみられるものですが、

その時の状態をしっかりと把握しておかないと、

「動かした方が良いのか?」 それとも 「安静にした方が良いのか?」

の判断ができません。

(動かしちゃいけないのに動かして余計に悪くなったとか、動かさないといけないのに安静にし過ぎて回復が遅れるとか、よくある話です…。)

 

しかも、問題のあるのが、「筋肉なのか?」、「関節なのか?」、「靭帯なのか?」

なども考えておかないと間違った対処法をしてしまう可能性があります。

どこが悪いのかわからないという方はこちらを参考に → 「悪いのは スジですか? ホネですか?」 

 

今回は「動かすと痛い」という症状が、「筋肉の問題」である場合を考えてみたいと思います。

 


筋肉が関節を動かす

筋肉の基本的な働きは「関節を動かす」です。

 

筋肉は骨にくっついていて、「収縮」することで骨を引っ張り関節を曲げたり伸ばしたりします。

 

筋肉の長さ、柔軟性、筋力などに問題がなければ動かした時に痛みを感じることはありません。

しかし、筋肉に何らかの損傷(傷ついた状態)があったとしたら、どうなるでしょうか?


下図は「筋肉に損傷があった場合のモデル」です。

中央が筋肉を動かしていない「ニュートラルな状態」です。

損傷が大きければ動かさなくても痛いでしょう。

しかし損傷が微細であれば、動かさなければ痛みはあまり感じずに済みます。

左側は筋肉が収縮した時(つまり関節を動かした時)です。

収縮することで筋肉に力が入り、「内圧」が高くなります。

筋肉に損傷があって「内圧」が高くなって膨らむワケですから

当然、「キズ口」はひろがります。

だから痛いです。だから動かしちゃいけません。

 

右側は筋肉を伸ばした時(ストレッチとかした時)です。

筋肉に損傷があって引き伸ばすワケですから

当然、「キズ口」はひろがります。

だから痛いです。だから動かしちゃいけません。

 

上に書いたように、損傷が大きければ動かさなくても痛いので、

患者さんの多くはあまり動かさないでいてくれますから「それ以上の損傷」を防いでくれています。

 

ですが、自分では気づかない「微細な損傷」の場合、

「動かした方がええんちゃうかな?」と思ってどんどん動かして、

自分で自分のカラダを傷めちゃうことがありますから注意が必要です。

 

内部での損傷が考えられる場合、一定期間は動かすことを制限し、

タイミングをみて運動療法を開始するという「段階的」な治療の組み立てが必要です。

 


次は「損傷がない場合」です。

損傷がなくても「動かすと痛い」という方は非常に多いです。

下図は「損傷がない場合モデル」です。

左側が収縮した時です。

このような時に痛みを感じるということは

筋肉内の血液、リンパが滞り循環が悪くなって「常に内圧が高い状態」と言えます。

収縮した時には「内圧」がさらに高くなり、それを痛みとして感じるワケです。

(こういう時の痛みの感じ方は「中で詰まった感じ」と訴える方が多いようです。)

 

「内圧」が高い状態で瞬間的に筋肉を収縮させると一気に「内圧」が高くなって、

筋肉が破裂するように痛めてしまうことがあります。(水の入った風船をつぶして破裂させるような感じですね。)

※ ギックリ腰でもそのように筋肉を傷めていることがあります。

 

このような時は筋肉を動かし、筋肉内に滞った血液、リンパなどを

「排出する」ように動かさないといけません。(「筋ポンプ」を働かせるということですね。)

 

ですが、普段運動していない人は自分の身体の「許容値」が低くなっていることが多いので、

無理せず、少しずつ動かすようにしないと余計に痛めますので注意してください。

 

 


右側は筋肉を伸ばした時です。

「カラダが硬くなってきたな~」という場合、筋肉を伸ばした時の抵抗感を痛みとして感じやすいです。

このような場合、筋肉が硬くなっていることが多いため

「カラダをやわらかくしなきゃ」と考えてストレッチ体操などをされる方が多いようです。

 

そのことは悪くはないのですが、以前書いたように

「筋線維」や「筋膜」の癒着が強い場合、癒着した部分を無理やり「剥がす」ことになって

余計に痛めることもあるため注意が必要です。

(癒着による損傷についてはこちら → 筋膜リリース )

 


 

今回は「動かすと痛い」という状態を、

「筋肉」にフォーカスして考えてみました。

実際には痛みを感じるのは「筋肉」だけでなく、「靭帯」や「関節包」など様々なところが考えられ、

その状態を把握した上で治療や運動療法の組み立てを行わねばなりませんから注意が必要です。

 

 


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