アイシングにはどのくらいの時間が必要か?

運動部の練習などで足首や太ももを痛めた学生さんが続いてます。

「痛めてすぐにアイシング」というのはもう常識になっているようですが、時間も期間も短いようです。

一般的に「20~30分程度行なう」と言われているのですが、

回復を早めてなるべく早く治すためにはそれだけでは十分とは言えません。

 

~ RICE処置 ~

応急処置の基本は以下の4つ。

①動かさない(安静:REST)
②冷やす(冷却:ICE)
③押さえる(圧迫:COMPRESSION)
④挙げる(挙上:ELEVATION)

の頭文字から「RICE処置」と呼ばれています。

②の「冷却(アイシング)」についてですが、ケガをしたところの「毛細血管を収縮させて内出血を抑える」、「痛みを麻痺させる」という意味合いで行なわれているようですが、実はそれだけではありません。

捻挫や打撲、骨折などのケガをすると靭帯や筋肉、関節を包んでいる関節包などの軟部組織が損傷され(1次損傷)、損傷部では炎症が起こり代謝が活発になるため酸素を消費します。この酸素消費量は莫大なもので、損傷部周囲の正常組織に必要な酸素も消費されてしまい、正常組織は酸欠を起こして障害を受けます。

これを「2次的低酸素障害」と呼ぶのですが、この被害がどのくらいかによって予後が変わってくるのです。

損傷部を修復するためには、代謝が起こり新しい細胞を作らねばなりませんから「栄養」と「酸素」が必要なわけです。

局所の酸素が炎症反応によって消費されてしまうと、修復に必要な酸素が足りなくなってしまいますから

「2次的低酸素障害」を防ぐためには、損傷部の酸素が豊富な状態でなければならないわけです。

 

~ ヘモグロビン ~

血液の中の赤血球には「ヘモグロビン」という物質があります。ヘモグロビンは酸素と結びついて、体内の各部へ酸素を運んでくれています。
このヘモグロビンには「低温環境下では酸素と結びつきやすくなる」という性質を持っています。(「ボーア効果」と言われています)

損傷部では炎症が起こり、たくさんの酸素が消費されますのでヘモグロビンはたくさんの酸素を運ばなきゃいけない。

つまり「2次的低酸素障害を防ぎ、回復を早めるためにはしっかりと冷やさないといけない」いうことが言えるわけです。

 

損傷部の炎症は「72時間」は続くと言われていますので、最低でも3日間は冷やし続けることが必要です。

 

 

「ヘモグロビン」については、医学系の「生理学」の教科書などには必ず書いていますので、興味のある方は調べてみてください。もっと面白いことがわかるかもしれません。