変形性関節症は骨だけの問題じゃない!  関節周囲の軟部組織変性を改善し、痛みを和らげるための徹底ガイド

2025.06.13

「年のせいだから仕方ない…」と諦めていませんか?

変形性関節症(OA)は、確かに加齢に伴い発症しやすい病気ですが、その苦痛の原因は、単に骨の変形だけではありません。

実は、関節を取り囲む様々な軟部組織の変性も深く関わっており、これらの組織にアプローチすることで、症状の改善や進行の抑制が期待できるのです。

 

この記事では、変形性関節症における軟部組織の重要性を解説するとともに、関節を構成する軟部組織の詳細な説明、そして、その変性を改善するための具体的な方法を、最新の研究に基づいて徹底的に解説します。長年の関節痛に悩む方も、これから変形性関節症の予防に取り組みたい方も、ぜひ最後までお読みください。

 

まだ「骨の変形だけ」だと思っていませんか? 変形性関節症の新たな視点

かつて、変形性関節症は、関節の軟骨がすり減り、骨が変形することで起こると考えられてきました。しかし、近年の研究では、関節を取り巻く様々な軟部組織、例えば靭帯、腱、筋肉、関節包、滑膜なども、変形性関節症の発症や進行に深く関与していることが明らかになっています。

 

骨の変形は、レントゲンなどの画像診断で確認しやすいですが、軟部組織の変性は画像には写りにくいこともあります。そのため、「骨には異常がないのに痛い」「骨の変形は軽度なのに痛みが強い」といった症状が現れることがあります。

 

変形性関節症の根本的な改善を目指すためには、骨だけでなく、関節を構成する軟部組織にも目を向け、多角的なアプローチで治療や対策を行うことが重要となります。

知っておくべき関節の構成要素:軟部組織の役割と変性

それでは、関節は具体的にどのような軟部組織で構成されているのでしょうか? そして、変形性関節症ではこれらの組織にどのような変性が起こるのでしょうか?

1. 関節軟骨(かんせつなんこつ)

関節軟骨は、骨の表面を覆う滑らかで弾力性のある組織です。主な役割は、関節にかかる衝撃を吸収し、骨同士が直接ぶつかるのを防ぐこと、そして、摩擦を減らしてスムーズな関節運動を可能にすることです。

 

変形性関節症における変性: 変形性関節症の初期段階では、関節軟骨の表面が傷つき、徐々に薄くなっていきます。進行すると、軟骨が完全に消失し、骨が露出してしまうこともあります。これにより、骨同士が直接摩擦を起こし、激しい痛みが生じます。

2. 滑膜(かつまく)

滑膜は、関節の内側を覆う薄い膜状の組織です。主な役割は、関節の動きを滑らかにする滑液を分泌することです。

 

変形性関節症における変性: 変形性関節症では、関節軟骨の破壊によって生じた微細な破片などが滑膜を刺激し、炎症(滑膜炎)を引き起こします。炎症が慢性化すると、滑膜が肥厚したり、過剰な滑液が分泌されたりすることがあります。

3. 滑液(かつえき)

滑液は、滑膜から分泌される透明で粘り気のある液体です。主な役割は、関節軟骨に栄養を供給し、老廃物を除去すること、そして、関節の動きを潤滑にすることです。

 

変形性関節症における変性: 変形性関節症では、滑液の質が変化し、粘り気が失われたり、炎症性物質が増加したりすることがあります。これにより、関節軟骨への栄養供給が滞り、潤滑作用も低下します。

4. 靭帯(じんたい)

靭帯は、骨と骨をつなぎ、関節の安定性を保つ役割を持つ、丈夫な線維性の組織です。

 

変形性関節症における変性: 変形性関節症が進行すると、関節の不安定性が増し、靭帯に過度な負担がかかることがあります。これにより、靭帯が緩んだり、逆に炎症や線維化によって硬くなったりすることがあります。

5. 腱(けん)

腱は、筋肉と骨をつなぎ、筋肉の収縮力を骨に伝える役割を持つ、強靭な線維性の組織です。

 

変形性関節症における変性: 変形性関節症によって関節の動きが悪くなると、周囲の腱に負担がかかり、炎症(腱炎)や変性を引き起こすことがあります。例えば、膝の変形性関節症では、膝蓋腱炎などが起こりやすくなります。

6. 筋肉(きんにく)

関節周囲の筋肉は、関節を動かすだけでなく、関節の安定性を保つ重要な役割を担っています。

 

変形性関節症における変性: 変形性関節症による痛みや関節の不安定性から、関節周囲の筋肉が萎縮したり、筋力が低下したりすることがあります。また、特定の筋肉に過度な負担がかかることで、筋肉が硬くなったり、トリガーポイントが形成されたりすることもあります。

7. 滑液包(かつえきほう)

滑液包は、骨と皮膚、骨と腱、腱と腱の間など、摩擦が生じやすい場所に存在する、液体で満たされた小さな袋です。主な役割は、これらの組織間の摩擦を軽減することです。

 

変形性関節症における変性: 変形性関節症によって関節周囲の組織に炎症が起こると、滑液包にも炎症が波及し(滑液包炎)、痛みや腫れを引き起こすことがあります。

8. 関節包(かんせつほう)

関節包は、関節全体を包み込む袋状の組織で、内側の滑膜と外側の線維膜の二層構造になっています。主な役割は、関節を安定させ、滑液を関節内に保持することです。

 

変形性関節症における変性: 変形性関節症が進行すると、関節包が肥厚したり、線維化によって硬くなったりすることがあります。これにより、関節の可動域が制限され、動きが悪くなります。

 

軟部組織の変性を改善するための具体的な方法

変形性関節症の苦痛を和らげ、進行を遅らせるためには、これらの軟部組織の変性に積極的にアプローチしていく必要があります。以下に、そのための具体的な方法を解説します。

1. 運動療法:関節周囲の筋肉を強化し、柔軟性を高める

適切な運動療法は、変形性関節症の軟部組織変性改善において最も重要な要素の一つです。

 

  • 筋力トレーニング: 関節周囲の筋肉(例えば、膝の変形性関節症であれば大腿四頭筋やハムストリングス、股関節であれば臀筋など)を強化することで、関節の安定性が増し、関節にかかる負担を軽減することができます。これにより、関節軟骨やその他の軟部組織への負担も減り、変性の進行を遅らせることが期待できます。

 

  • ストレッチング: 関節周囲の筋肉や靭帯の柔軟性を高めることで、関節の可動域を維持・改善し、こわばりを軽減することができます。柔軟性の向上は、関節への過度な負担を防ぎ、軟部組織の変性を抑制する効果があります。

 

  • 低負荷の有酸素運動: ウォーキング、水泳、サイクリングなどの低負荷の有酸素運動は、全身の血行を促進し、関節周囲の軟部組織への栄養供給を改善します。また、適度な運動は、炎症を抑える効果も期待できます。

2. 手技療法:筋肉や筋膜の緊張を解放し、関節の動きをスムーズにする

手技療法は、筋肉や筋膜の緊張を解放し、関節の動きをスムーズにするのに役立ちます。

  • マッサージ: 関節周囲の筋肉を丁寧にマッサージすることで、筋肉の血行が促進され、緊張が和らぎます。これにより、関節への負担が軽減され、痛みの緩和にも繋がります。

 

  • 筋膜リリース: 筋膜は全身の筋肉を覆う膜状の組織で、癒着や緊張を起こしやすい部分です。筋膜リリースによって筋膜の制限を取り除くことで、関節の可動域が改善し、筋肉の柔軟性も向上します。

 

  • 関節モビライゼーション: 関節の動きを専門的な手技によって改善する治療法です。関節の可動域を広げ、周囲の軟部組織への負担を軽減する効果が期待できます。

3. 装具療法:関節への負担を軽減し、安定性をサポートする

適切な装具を使用することで、関節への負担を軽減し、安定性をサポートすることができます。

  • サポーターやブレース: 関節をサポートし、不安定感を軽減することで、関節周囲の軟部組織への負担を減らすことができます。

 

  • インソール(足底板): 足のアライメントを調整することで、膝や股関節への負担を軽減することができます。

4. 薬物療法:炎症や痛みをコントロールする

薬物療法は、変形性関節症の症状を一時的に緩和するために用いられますが、軟部組織の変性そのものを改善する効果はありません。しかし、痛みをコントロールすることで、運動療法などの他の治療法に取り組みやすくなるというメリットがあります。

 

  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs): 炎症や痛みを抑える効果があります。

 

  • ヒアルロン酸注射: 関節内にヒアルロン酸を注入することで、滑液の潤滑作用を補い、痛みを和らげる効果が期待できます。

5. 栄養補助食品:軟骨の健康をサポートする可能性

グルコサミンやコンドロイチンなどの栄養補助食品は、軟骨の構成成分を補い、軟骨の健康をサポートする可能性があるとされています。ただし、科学的な根拠はまだ確立されていません。

6. 生活習慣の改善:体重管理と禁煙

  • 体重管理: 過剰な体重は、膝や股関節などの体重を支える関節に大きな負担をかけます。適切な体重を維持することは、関節軟骨だけでなく、周囲の軟部組織への負担を軽減し、変性の進行を遅らせるために非常に重要です。

 

  • 禁煙: 喫煙は、関節軟骨の破壊を促進する可能性が指摘されています。禁煙は、関節の健康維持にとって重要です。

7. 再生医療:新たな可能性

近年、再生医療の分野では、変形性関節症に対する新たな治療法が研究されています。

 

  • PRP(多血小板血漿)療法: 患者自身の血液から抽出した多血小板血漿を関節内に注入することで、組織の修復を促す効果が期待されています。

 

  • 幹細胞療法: 患者自身の骨髄や脂肪組織から採取した幹細胞を培養し、関節内に注入することで、軟骨の再生や炎症の抑制効果が期待されています。

 

これらの再生医療は、まだ研究段階であり、保険適用となっていない場合もありますが、将来的に変形性関節症の軟部組織変性に対する有効な治療法となる可能性があります。

 

【まとめ】多角的なアプローチで軟部組織の健康を取り戻し、変形性関節症と向き合う

変形性関節症は、骨の変形だけでなく、関節を構成する様々な軟部組織の変性が複雑に絡み合って発症・進行する病気です。痛みや機能障害を改善するためには、関節軟骨だけでなく、靭帯、腱、筋肉、滑膜、関節包といった軟部組織にも目を向け、多角的なアプローチで治療や対策を行うことが重要です。

 

今回の記事で紹介した運動療法、手技療法、装具療法、薬物療法、生活習慣の改善、そして将来が期待される再生医療など、様々な方法を組み合わせることで、軟部組織の健康を取り戻し、変形性関節症による痛みや不自由さを軽減し、より活動的な生活を送ることが可能です。

 

「年のせい」と諦める前に、当院にご相談ください。より良い生活を過ごすために、一緒に自分に合った改善方法を見つけていきましょう。